仏像を拝観すると、時折素朴な疑問がわかないだろうか?
仏様の性別は一体何なのか?
と、
特にチベット仏教においては多様な仏達が存在しているが、今回はチベットの仏達にスポットを当ててみて気になる仏達の性別について研究してみたいと思う。
【お釈迦様の性別】
仏の中で1番有名なのは釈迦牟尼如来、つまりお釈迦様だ。
お釈迦様は釈迦国の王子として生まれ、何不自由なく生活していたが後に悟りを開く為に旅立ち、仏教の開祖となった人物だ。
本名をゴータマ・シッタールタといい、性別は男だ。
ただ、これは歴史的人物として見たお釈迦様であり仏教において性別が男?女?という議題から多少ずれている。
だから、ある人は仏様は性別を超越している!
と考えている人もいるようだ。
“性別を超越している”という根拠として、恐らく法身という考え方があるからだろう。
法身とは仏の身体の在り方『三身』の内の一つであり、真理・宇宙の象徴としての仏の事を言う。
因みに他二つは
■報身(肉体は無いが姿がある仏)
■化身(ゴータマ・シッタールタとして現れた仏)
有名なのは五智如来の中心的仏大日如来がいるが、彼は太陽神であり法(ダルマ)の象徴でもある。
またチベット仏教4大宗派の一つニンマ派において、普賢菩薩は法身の地位まで格上げされ、しばしば仏画等で白い身体の妃を抱いたヤブユムの状態で描かれる事もある。
ヤブユムとは智恵と方便の合一は悟りへと至る道という意味であり、この場合智恵とは女尊、方便は男尊を指している。
ヤブユムでも分かるようにチベット仏教では仏の性別が分かりやすく描かれているのが特徴だ。
因みにヤブユムについての記事はこちら
【観音菩薩の性別】
観音菩薩とは悟りへの勇気を持つ人ボディー・サットヴァの音写だ。
仏画や仏像で描かれる際は、男性とも女性とも見えない中性的な姿で描かれるが、結論からいうと観音菩薩は男性である。
何故ならボディー・サットヴァとは男性名詞だからである。
しかし、菩薩全てが男性という訳ではなくチベットやネパールで絶大な人気を誇る緑ターラ菩薩、白ターラ菩薩のように観音菩薩から生み出された女神達が有名である。
また聖観音という菩薩は左手に蓮華を持ち右手を予願印を結んでいる極めて女性的な菩薩であるが、この菩薩を女性たらしめているのは蓮華である。
仏教において蓮華は女性の象徴として描かれる事もあり、智恵と同じ意味を持っている。
女性の象徴である蓮華を何故、男性である菩薩が持っているのか?
それは観音菩薩の起源を辿れば東アジアの女神とされる事があるからだ。
だが、この観音菩薩。
正確な起源は謎なのだ。
起源は不明だが現在に至るまで日本を含めアジア中で広く信仰されている人気者である事は間違いはないだろう。
因みに観音菩薩は様々な姿で表現されてきた。
例えば十一面観音や千手観音等・・
様々な菩薩についての記事はこちら
【恐るべき女神達】
チベット仏教ではインド・ヒンドゥーイズムの影響を受けているため、インド由来の女神達が登場する。
代表的なものはダーキニー。
カッパーラと呼ばれる頭蓋骨の杯に入った血をすする恐るべき魔女の姿で描かれるが、彼女は元々女神カーリーの侍女であった。
その後カーリーは破壊神シヴァの妃となった為、ダーキニーもシヴァの侍女となったのだ。
また彼女達は護法神達の妃として描かれる事もあるが、これは男尊にエネルギーを注ぎ込む役目をになっている。
このエネルギーの事をシャクティと言い『力』『性力』を意味し、男尊のエネルギーの源とされる。
ヒンドゥー教由来の女神は他にも存在し、聖都ラサの守護者であるパルテン・ラモは女神ラクシュミ信仰由来であり、チベット仏教の女神崇拝と結びつき誕生した女神だ。
そんなヒンドゥー的仏教のチベット仏教の神々だが、ヒンドゥー教よりも仏教が勝っているとするために誕生したチャクラサンヴァラと呼ばれる仏が存在する。
チャクラサンヴァラは青い身体に手が沢山あり、三日月の冠を頂く一見シヴァ神をイメージする仏だが、彼が踏みつけているのはシヴァとその妃だ。
チベット仏教では、この他にも日本では見る事の出来ないヘーヴァジュラやヤマーンタカといった異形の仏達が存在するが、こういった神々を見る為にチベットを旅するのがボクの目的の一つだ。
チベット仏教寺院にいくと女性や男性の仏達が壁一面に描かれ、チベットの信仰心と仏教美術の凄さを肌で感じる事が出来る。
ボクは仏画絵師であるため、そんな神々を調べて描くが、調べて行く内に様々な出自が分かるから面白い。
先も述べたようにヒンドゥー教の神々から結びついたものや、迦楼羅(ガルーダ)や弁財天(サラスヴァティ)のようにヒンドゥー教の神々も登場するし、阿修羅のようにゾロアスター教のアスラから来ている神もいる。
日本の寺院で仏像を見る限り、仏様が男性か女性か?
区別がつきにくいが仏教が盛んなチベットにへ行くと、その点がハッキリしている。
今回は仏様の性別について記事にしてみたが、結論を言うと男性の仏も女性の仏も存在するという事である。