京都府東寺には立体曼荼羅があり大日如来や不動明王等様々な尊格を拝観できるが中でも帝釈天の仏像はイケメンと言われている。
ボクも実際に見たことがあるが確かにイケメン(笑)だった。
今回この記事では東寺の立体曼荼羅の仏像を代表する帝釈天について書いていこうと思う。
【天部について】
まず初めに帝釈天が属している天部というものに語ろうと思う。
天とはサンスクリット語でデーヴァと言い、音写で提婆『天』と訳している。
天部はヒンドゥー教神話に登場する神々や大自然を神格化した尊格が殆どだ。
彼らが仏教に取り入れられ仏法を守護する天部として活躍するようになった。
天部には日本でも有名な大黒天や弁財天等も属しているが『天部』について詳しく書いてある記事もあるので読んで欲しいと思っている。
【保存版】仏法を守護する神々『天部』27尊を徹底解析!
【元はインドの神様だった帝釈天】
東寺にある帝釈天の仏像を見ると象に乗り甲冑を着込み金剛杵を持った姿で造られている。
この姿は明らかにインド神話に登場する軍神インドラの影響が見て取れる。
例えば帝釈天が持っている金剛杵はインドラが持つ雷の威力を発揮するヴァジュラであり
その武器でインドラは人々を干ばつで苦しめた龍神ヴリトラを倒し喝采を浴びた。
このような功績からインドラは梵天(ヴラフマン)と共にヒンドゥー教の最高神に数えられるようになったのだ。
因みに梵天も東寺の立体曼荼羅に登場しガチョウ(聖鳥ハンサ)に乗った多面多臂の姿で見ることが出来る。
これもインドラ動揺、ヒンドゥー教の最高神である多面多臂のヴラフマンがモデルである。
仏教では釈迦が人々に“教え”を広めるよう勧めた『梵天勧請』が有名だが
実は梵天と共に帝釈天も勧めた為か仏画等では対として描かれる事が多い。
また帝釈天は軍神であり鎧と共に象に乗った姿であるが
この象は戦車であり名前は象王アイラーヴァタといい帝釈天はこの象に乗って勇猛果敢に戦うのだ。
【帝釈天が住む場所は?】
帝釈天が住む場所は須弥山とされている。
須弥山というのは世界(仏教上)の中心にあるとされる聖なる山であり現実世界においては西チベットにあるカイラス山である。
*カイラス山はヒンドゥー教では破壊神シヴァの住む山でもある。
この聖なる山の頂上にある欲界第二天の忉利天にある善見城(喜見城)の城主である。
須弥山には四つの門があり、この門を守護するのが 四天王(広目天・持国天・多聞天・増長天) であり帝釈天は彼らを使い人間界を探らせ悪事がないか監視しているのだ。
また彼らは寺院を守護する存在として壁画や仏画に描かれたりし日本では七福神の一つ毘沙門(多聞天)として崇められている。
四天王についてはこちら
邪鬼を踏みつける怒れる四天王『チベットと日本の四天王図の大きな違いとは?』
【甲冑姿だけではない帝釈天の姿】
帝釈天ことインドラは軍神なので東寺では甲冑姿・金剛杵を持った造られているがインドにおいては宝蓋(傘)を持った仏像が多い。
これは釈迦が忉利天に昇った際、摩耶夫人に説法した際に帝釈天は宝蓋を持って仕えていた事に由来する。
またチベット寺院に行くと梵天と帝釈天の壁画が描かれている事もあり
その際の姿は梵天は黄色い身体に多面で法輪を持った姿で描かれる。
法輪は仏教の教えを広める象徴でありチベット寺院上部には必ず設置されている。
帝釈天の姿は白い身体にホラ貝を持った姿で描かれる。
ホラ貝は仏教では仏陀の解脱を告げる象徴としてチベットの八大吉兆として壁画等に描かれている。
またホラ貝はチベット僧の読経でもしばしば使用され
僧侶の経を読む声と共にボ~というホラ貝の音が聞こえる事もある。
ホラ貝を含め読経で使用されるチベタンホルン(トゥン)やラッパの音色は美しく一度聴いたら忘れられない程だ。
特にチャムというチベットの祭りでは様々な楽器が使われ荘厳な仏教世界を見せてくれる。
インドで実際に見たことがあるが一言ではいい表されない程、感動的だった。
【まとめ】
東寺の立体曼荼羅で拝観できる帝釈天のルーツを辿ってみると ヒンドゥー教のインドラに行きつく事が出来る。
帝釈天が属している天部を調べると様々なルーツを持った神々を見ることが出来るので
興味のある人は彼らのルーツを探るためインドやネパール等に行ってみるのも面白いかもしれない。
現地に行ってみると天部の神々が日常に溶け込んでいて人々から崇められている姿をよく見掛ける事ができ
日本とは違う異質な世界が堪らなく魅力的だ。
特にネパールはヒンドゥー教と仏教が混合していて独自の文化を形成していて仏像好きにはオススメなので是非行って欲しいと思っている。