『世界の屋根』チベット・・
この秘境の地はインドの僧侶パトマサンヴァパにより密教がチベット人達に広まり信仰心高い地域となった。
その証拠にチベット文化圏の国々に行くと真言オム・マ二・ペメ・フムと口ずさむチベット人の姿をよく目にする。
それでは彼らが口ずさむ真言(マントラ)とは一体何なのか?
簡単に言えば古代インドからやってきた神仏達と交信できる呪文のようなものだ。
ボクは以前ネパールに行ったさい、ある日本語の話せるネパール人に何故、チベット人は数珠を持って真言を口ずさむのかと聞いたことがある。
彼の答えは魂が神さまの元に向かわせる為にオム・マ二・ペメ・フムと唱えている。
と答えてくれた。
ここにチベット人や仏教徒達の優しさや信仰心の高さを垣間見れるのでは無いだろうか?
【様々な真言】
チベットの有名な真言オム・マ二・ペメ・フム・・
この言葉の意味は蓮華の中の宝珠よ、幸あれ!
という事を意味し観音菩薩と交信するために唄われる。また真言は各尊格ごとに言葉も変わってくる。
■お釈迦様
例えば仏教の開祖、お釈迦様の真言は・・
サルヴァクレーシャニシューダナ・サルヴァダルマヴァシィタープラターパガガナサマーサマ・スヴァーハー
となる。
■大日如来
密教というのは大日如来の教えが元になっているわけだがその大日如来の真言は・・
オム・サマンタブッダーナーム・ア
■阿閦如来
何事にも動じず、いかなる障害をも砕く阿閦如来という仏は
オム・アクショーブヤ・フン
■薬師如来
人々の病を治す日本でもよく知られている薬師如来(バイジャグル)はインドやチベットでも信仰されている。
ナマハ・サマンタブッダーナム・オム・フル・フル・チャンダリ・マタンギ・スヴァハー
■宝生如来
富を司る仏であり身体は黄金色に輝き妃を抱いた状態をとる事もあり名前はサンスクリット語でラトナサンバヴァ、宝から生まれた者を意味する
オム・ラトナサンバヴァ・トラハ
■阿弥陀如来
密教が盛んなチベットではアミターユス(無量寿)とアミターバ(無量光)と呼ばれる僧侶の姿の仏と菩薩のような煌びやかな密教としての阿弥陀如来が創られた。
アミターバの真言
オム・アミタブラバ・スヴァーハー
アミターユスの真言
オム・アムリタテージェー・ハラ・フム
因みに阿弥陀如来についての記事はこちら
■ヴァジュラハイラヴァ
ボクがチベット文化圏の国々を旅して、その異形のお姿にびっくりしたヴァジュラハイラヴァという水牛の頭を持った仏の真言は・・
オム・シュリー・ヴァジュラ・へー・へー・ル・ル・カン・フン・フン・パト・ダーキニージャーラサンヴァラン・スヴァーハー
■文殊菩薩
日本の諺、三人寄れば文殊の知恵で有名な智恵の文殊菩薩の真言
オム・ア・ラ・パ・チャ・ナ
■地蔵菩薩
日本で至る所で道祖神のように街頭に奉っている地蔵菩薩はチベット仏教でも信仰されている。
唯一違うのは天衣をまとった菩薩の姿をしている。
クシャー・ハラナ・スヴァーハー
■金剛手菩薩
ヴァジュラを持つ者を意味する菩薩ではあるが他の菩薩のように優しい顔をしておらず忿怒の形相をしている。
オム・ニーラン・バラダラ・ヴァジュラパーニラージュニャーバヤティ
■アチャラ
アチャラとは『動じない者』すなわち不動明王の事でチベットでは日本程ではないが各地で信仰されている。
オム・チャンダマハーローシャナ・フム・パト
■マハーカーラ
日本では柔和な老人の姿で描かれる事が多いがチベットでは恐ろしい護法尊として様々な姿で描かれる。
オム・マハーカーラヤ・スヴァーハー
マハーカーラについての記事
■ヘーヴァジュラ
世界を創造し、悟りへと至る至高の尊格へーヴァジュラ。
彼は妃ナイラートマーを抱き、十六の手には頭蓋骨の容器カッパーラを持っている。
オム・デーヴァ・ピチュ・ヴァジュラ・フム・フム・フム・パト・スヴァーハー
■カーラチャクラ
カーラチャクラは時間のサイクルを表し過去現在未来を象徴している。『時輪タントラ』の本尊でもある。
オム・アーハ・フム・ホーホ・ハン・クシャ・ハン・クシャ・マラワラヤ・スヴァーハー
■秘密集会(グヒヤサマージャ)
後期密教経典『秘密集会タントラ』が形をとった仏で多面多臂で妃を抱いた姿をとっている。
オム・アーハ・マン・フム・オム・アーハ・マン・フン・オム・アーハ・マン・フム
■ターラー菩薩
チベット仏教ではヒンドゥー教と結びつき女神というカテゴリーが生まれ、その代表的なものはターラー菩薩だ。
オム・ターレー・トゥッターレー・トゥレー・スヴァーハー
■ダーキニー
また、ダーキニーと呼ばれる生き血を啜り、虚空を飛ぶ魔女がチベット仏教には存在し、彼女達は守護尊ヘールカの妃でもある。
そんなダーキー二ーの真言は
オム・ヴァジュラダーキニー・フム・パト・スヴァハー
■マーマキー
宝生如来やあしゅく如来の妃とされチベット文化圏の他、日本でも『ままき・もうもうけい』として胎蔵曼荼羅の金剛手院に描かれている。
トリト・トリト・ジャヤンティ・スヴァハー
■白衣明妃
パーンダラーといい日本では白衣観音として呼ばれている女神
オム・パンダラヴァーシニ・パドマサンバヴェー・ヴァダ・ヴァダ・フム
■仏頂尊勝(ウシュニーシャ・ヴィジャヤー)
女神仏頂尊勝は仏陀の頭(知恵)が神格化した女神である。
オム・ブルン・スヴァハー
■摩利支天
チベット仏教の摩利支天(マーリーチー)は猪が曳く車に乗っているがこれは太陽エネルギーの象徴とされている。
オム・マーリーチャイ・マン・フム・フム・パド・パド・スヴァハー
■ガネーシャ
ヒンドゥー教由来の神様で、最も有名なのがガネーシャではないだろうか?
日本でも歓喜天や聖天とも呼ばれる象の頭をした知恵や学問、商売を司る神様だ。
そんな神様の真言が
オム・トラン・タ・タ・タ・フム・ジャ・スヴァーハー
■ガルーダ
ヒンドゥー教由来の神様はガルーダも忘れてはいけない。
彼はヴィシュヌ神の乗物で龍を常食とする伝説上の大鳥だ。
オム・クシバ・スヴァーハー・オム・バクシ・スヴァーハー
因みにガルーダについての記事はこちら
■ナーガ
ガルーダとは犬猿の仲である蛇族も仏教に取り込まれ仏法を守護する存在となった。
その蛇族をナーガといい、法華経ではナンダやウパナンダと言われる龍王が登場する。
ナンドーパナンダイェー・スヴァーハー
以上のようにチベット仏教では様々な尊格がいて、その尊格ごとに多種多様な真言が唱えられチベット仏教世界を作っているのだ。
チベット仏教では僧侶や寺院が自身の守り神として仏教の神々のカテゴリーから一尊を選び出すという風習がある。
チベットに旅をして僧侶にあなたの本尊は何?
と聞くともしなしたらその僧侶が本尊としている仏様だったり真言を教えてくれるかもしれない。