近年テレビで東チベットのチベット仏教寺院ラルン・ガル・ゴンパが時たま放送され、その存在が大っぴらになり東チベットへ旅行する人も増えるのではないかと思うが
パーミット(許可証)東チベット・東北チベットには日本人の知らないチベット仏教寺院の数々が存在し地元チベット人達から篤い信仰を受けている。
【東チベットの仏教寺院】
一般的に東チベットとは四川省西部のカムと言われる地域を言い、そこにはチベットの情緒溢れる風景や巨大な湖が広がっている。
そんな東チベットにはゴンパ(チベット仏教寺院)が幾つも存在し、仏像仏画好きなら一度は行って欲しい秘境の地だ。
因みに東チベットへの行き方についてはこちら
以下のゴンパは始めてボクが東チベットを旅した時に訪れたゴンパだが、この他にもガイドブックに載っていない寺院も数多く存在する。
【ンガチュ・ゴンパ】
ボクが東チベットへ行ったのはボクが仏教の絵の勉強の為であり本場チベットの壁画や仏像をこの目で確かめたかったし、中国共産党支配下のチベットの現状というのが一体どういう状況なのか・・確認したかった。
四川省成都から乗合タクシーで6時間。
猛スピードの乗合タクシーが山あい深く入ると『康定(カンディン/ダルチェンド)』という街に着いた。
一見中国の温泉街でような雰囲気だが康定は古くからチベットと中国要衝の街であり、そこはもう東チベットだ。
それが証拠に切り立った山を見てみるとチベット仏教の神々の彫刻が・・
街を歩くとマニ車やチベット的なオブジェ、そしてこの康定で始めてチベット仏教寺院ゴンパを目にする。
それがンガチュ・ゴンパだ。
かつては100人もの僧侶達がいたゲルク派僧院でダライ・ラマが滞在したこともある由緒あるゴンパだ。
ボクはこのゴンパに来て驚いた事がある。ゴンパに必ずある四天王の壁画がプリントだったのだ!
四天王とは東西南北を護る神々でゴンパには必ず描かれ、ゴンパを護っているという意味を持っているのだろう。
ネパールには美しい四天王の壁画が沢山あるが康定のンガチュ・ゴンパは違った・・。
多分、伝統を受け継ぐタンカ絵師が圧倒的に不足しているのだろう。
年々タンカ絵師達は減少傾向にありチベットではこのまま行くとタンカ絵師はいなくなるのではないかと思うくらいだ。
そう思わざるおえない位、絵を描くものとして衝撃的な出来事だった。
とはいえ本堂隣のお堂には巨大な観音像が鎮座し綺麗な壁画や仏像があり、どことなく厳かな雰囲気をかもちだしている。
ボクはこのゴンパの隣にあるゲストハウス(black tent G.H*現在は別名)で泊まったがガイドブックにあるように朝はゴンパの鳴り物で目が覚めるなんて事はなく、そればかりか経の音もなく何とも寂しい感じを受けた。
信仰が盛んなボダナートとは大違いである。
ンガチュ・ゴンパより少し上るとゲルク派僧院ラモ・ツェリン・ゴンパと文化大革命で破壊され、その後再建されたドルジェ・ダク・ゴンパがある。
因みにネパール・ボダナートにはゴンパ好きには是非行って欲しい聖地でストゥーパ周辺には20以上にも及ぶゴンパがある。
【ラガン・ゴンパ】
早朝ボクはミニバスで康定から塔公(ターゴン/ラガン)に向かった。
すると康定をぬけると中国的な風景は一変!
標高3700㍍を超え、チベットらしい風景が広がりボクはようやくチベットに来た!と実感する事が出来た。
ラガンは康定から2時間過ぎくらいで到着する小さな街であるがラガンにあるサキャ派僧院ラガン・ゴンパにはチベットで最も神聖とされる釈迦牟尼像があり地元チベット人に深い信仰を受けている。
因みにこの釈迦牟尼像、撮影禁止だったらしく僧侶に注意されてしまった為、撮影はやめた方がいいだろう。
他にもラガン・ゴンパにはサキャ派らしくサキャ派の中心的役割を果たすへーヴァジュラの壁画や水牛の頭を持つヴァジュラハイラヴァの壁画があって美しい壁画の数々に感動を覚えた位だ。
本堂左手には巨大な千手観音がいてダライ・ラマの写真も飾っていたりする。
そのせいか写真回りには囲いが設けられていたが意味はあるのだろうか・・。
また、千手観音がある御堂には緑ターラ菩薩や白傘概仏母の壁画がある。
そしてラガン・ゴンパにはマハーカーラの壁画等、仏教美術がてんこ盛りだ。
【ニンツォ・ゴンパ】
トイレの無いサイコーなホテルで1泊したボクは翌日カンゼ(ガンズー)行きのバスに乗りタウ(ダオフー)に向かった。
タウに向かうと辺りはいつの間にか木々が広がり自然豊か風景になったが険しいアップダウンを繰り返し、ラガンを出発して3時間位だっただろうか。
ようやくタウに到着!!
実はタウの見どころはニンツォ・ゴンパよりタウの巨大チョルテン(仏塔)だ。
ボダナートのストゥーパをも引きを取らない存在感があり、その巨大さに圧倒された。
因みに巨大チョルテン隣には簡易的なゴンパのような場所があり、数々の美しい仏像があるのだ。
このような場所でもチベット人に信仰され、五体投地を行う人たちもいるのだ。
ニンツォ・ゴンパはタウの街から少し上った丘のような所にありタウ一体を見ることができ気持ちいい場所だ。
ただどこのゴンパもそうだが近くに公安警察の詰め所があり僧侶達の動向を警戒しているのだ。
一体中国は何を恐れているのだろうか・・。
【カンゼ・ゴンパ】
ダンゴ(ルーフォ)でダンゴ・ゴンパを見学したボクは(閉まっていたが)いよいよカンゼに向かった。
カンゼへ向かうと再びチベット的な荒野が広がりチベット自治区に来ていると錯覚してしまう程、美しい光景が広がっていた。
途中、カサル・リンポチェのゴンパがあるカサル・ツォを通り過ぎたが、息を呑む程の巨大な美しい湖だった。
そんなこんなで、カンゼ州の中心地カンゼに到着すると・・
いきなり!!
「セルタ!!セルタ!!セルタ!!」
と大勢のチベタンがボクにかけよりセルタと連発する。
セルタとはラルン・ガル・ゴンパがある街なのだが彼らは多分セルタ行きのドライバーなのだろう。
ただラルンガルは外国人立ち入り禁止の場合があった為(2017年1月)無駄な労力を使いたくないボクは行く事をやめた。
カンゼは意外に都会でチベタンも多く、そして公安警察が至る所で警戒していた。
多分今までの東チベットの街の中でも公安警察の数は1番多かっただろう。
カンゼ・ゴンパはチベット人たちの集落近くの丘の上にありカンゼの街を見下ろす大僧院だ。
カンゼ・ゴンパにはひな壇に並べられた幾つもの仏像が圧巻であり、その荘厳なお姿の数々を見たボクは五体投地を繰り返し熱心に祈りを捧げた。
信仰心の無いボクでも、その神々しいお姿を見た途端・・体が勝手に・・。
またひな壇を囲むようにチベット仏教の代表的な祖師像が安置され神聖な雰囲気をかもちだしていた。
あの、ひな壇は土手も美しく1度は見てほしいとボクは思う。
【東北チベットの仏教寺院】
東チベットの旅から後年ボクは東北チベット(アムド)に興味を持ち大草原にある様々なゴンパを巡った。
アムド地方には老木寺やタール寺、ラプラン寺等、ラルンガル・ゴンパに負けないような大きな寺があるが現時点で行った事のある所だけ紹介しようと思う。
【マルカム・ゴンパ】
アバ州の中心地であるマルカムにあるゴンパでメインストリートから見える小さな丘の上にある。
この寺の特徴はボン教とチベット仏教の寺が隣同士になっている事で
ボクが行った時、入り口付近にヤギや子犬がキャンキャン吠えてボクの事を威嚇していた。
犬が苦手なボクにとっては恐怖でしかなかったが・・
こじんまりした寺にはボン教の神様が描かれていたり仏像があったり結構な見ごたえがあった!
【タツァ・ゴンパ】
ゾルゲの町は他の町同様、中国語の看板が沢山あって似たような建物がある町だが町の外は果てない大草原が広がっている。
タツァ・ゴンパは町から徒歩でも行けるくらい近く
観光地化されているのか中国の旅行系のHPにも紹介されている寺で訪れるのは巡礼者か僧侶位しかいない静かでのんびりしたゴンパだ。
本堂には壁画や仏像が沢山あるがタツァ・ゴンパに限らず他のゴンパでも扉が開いてない時があるので僧侶に頼むしかない。
この時は偶然、僧侶に声をかけられ僧侶同伴の元、見学出来たがやはり中は最高だった!
他にも沢山のお堂があるが開いてない所が多かった。
【老木寺】
ゾルゲ北部にある大きな寺でキルティ・ゴンパとセルティ・ゴンパの2つに分けられている(仲が悪いらしい)
ボクが初めて老木寺に行った時は夏の事で中国人旅行客が沢山いたのを覚えている。
2つの寺とも内部を見学出来るが写真撮影禁止らしい。
という事で内部の写真は無いが、広い寺の中には大きな壁画が沢山あって見ごたえアリ。
また2つの寺は丘の上にある為、ここから見える景色は老木寺の町並を一望出来て最高だった。
【まとめ】
東チベット・東北チベットにはここで紹介したゴンパの他にも数多くのゴンパがあるが、やはり公安警察の目が光り本来の姿を目にする事は出来ないだろう(観光地化されている所が多い)
ボクはこの旅を通しアメとムチを行う中国のチベットに対する現状が少し垣間見た旅であった。
ただそれでもボクはチベットの旅を続けようと思う。
もしかすると東チベットのどこかにラルンガル・ゴンパやアチェンガル・ゴンパに匹敵するようなゴンパがあるかも知れない・・
ボクはそんな旅人が知らないであろうゴンパを探し求め、この先も旅を続けようと思う。
もしそんなゴンパが見つかった時はこのブログで紹介するのでボクの旅の動向を注目していて欲しい。