今回のチベット旅の目的の一つ。
それは東北チベットのガワ/四川省アバ県*発音的にはアパに行く事!
アバはギャロン地方を抜け青海省近くの四川省奥地にある標高3000メートルを越える山々の中にあって信仰心が高い街だ。
そんな町なので周辺にはゴンパ(チベット寺院)が幾つもある。
ぼくがチベットを旅するのは絵の勉強の為に仏教美術を見るためなので
アバはそういう点ではうってつけの場所なのです(寺院には壁画や仏像が沢山あるので)
さて!
ぼくはアバに行くのに少し不安があった。
アバは以前チベット人による中国政府への抗議の焼身自殺が度々あって外国人が入れるか分からなかった。
でも、どうやら今はそういった事が落ち着いていているらしく
前日いたマルカムで公安に事情聴取された際、彼らにアバに行くと行ったら特に何も言われなかったので大丈夫なのだろう。
そんなわけでぼくはマルカム6時50分発アバ行きのチケットを買い7時過ぎに出発した。
因みにマルカムに関してはこちらの記事を読んでみて下さい。
【ギャロンを抜けアムドの大草原へ】
バスは乗客を乗せ森林地帯を走って行き、いつしか木はなくなっていき大草原の中を走っていた。
季節は冬。
窓から見えるのは寒々強い東北チベット・アムドの大草原で黄土色の大地が広がっている。
バスは壌口での休憩。アバとメワ(紅原)に行く分かれ道での二回の休憩を挟み目的地まで走っていく。
アバ方面に行くと広大な山々が幾つも現れた。
人の影こそなかったがヤクが山あいに群れをなし草を食べていたり、
窓から見える果てしなく続く山々がぼくの目を楽しませてくれた。
そんな光景を見ているとアバ県とかかれた看板が出てきて遂に目的のアバが近付いてるのが分かってきた。
アバの街に近付くにつれ建物が増え丘の上に立つ金ぴかの屋根を頂くチベット寺院が見えてきた。
遂にきたのか・・!
ここはもう既にアバ。
チベット寺院が沢山ある曼荼羅世界だったのです。
【チベタン経営のホテルに泊まる】
街に入ると始めに見えてきたのは長い塀の中に城のような寺が幾つもあるチョナン派寺院セー・ゴンパだった。
よし!ホテルを見つけたあとで行こう!
ぼくはそう意気込みバスターミナルに到着後
早速ホテルを探した。
ホテルはバスターミナル周辺に沢山ありどうするか考えると
チベタンのじいさんがやってきて何か話しかけてきた。
ぼくはホテルを探している事をジェスチャー等で伝えると
じいさんは80元で泊まれるホテルがあるというので
ぼくは彼に誘われるがまま、あとを着いていった。
ホテルはあっという間に見付かった。
ぼくがアバにいる間、お世話になるホテルはバスターミナルの向かい側にある所で
名前は中国語とチベット語で何て書いてあるか分からなかったが綺麗なホテルで
外国人OKのようだった。
このホテルは一泊130元(80元ではなかった!)と若干高かったが
泊まれるみたいだったので迷わず二泊分260元を渡しチェックイン!
ぼくはパスポートを見せ出迎えた少年は少し待つように言った。
待っているとオーナーらしき人物を連れてきた。
背の高い中年のチベタンだった。
余談だが彼は少し英語が喋れるチベット人で、そのおかげで割りとスムーズにチェックイン出来た。
オーナーはぼくをレセプションから離れた場所にあるメインのホテルに案内した。
シングル部屋はホテル二階にあってベッドが二つ、TVにシャワー・トイレにバスタオルにアミュニティグッズ付きと申し分ない部屋だった。
ぼくは荷物をおろすとオーナーはパスポートを見せるように言うと、写真を撮った。
他のチケットの街のホテルでもそうだがパスポートの写真を撮って公安に送るシステムになっている。
そしてオーナーは前にいた街はどこで次にどこに行くのか?
という事を聞き後にした。
どうやらチェックイン時に色々聞かれるのは後々知ったのだけれど
中国の旧正月が近いという事らしく、この時期に外国人が泊まると色々書類が必要らしい。
さて!
準備は整った。
ぼくはリュックだけを残し目的のゴンパ巡りの旅が始まった。
【チョナン派寺院セー・ゴンパへ】
近くの回族の食堂でラーメンを食べ腹ごしらえをすると早速向かったのはバスから見えたセー・ゴンパだった。
バスターミナルからも近く歩いて10分もあれば直ぐに到着出来る。
行ってみてわかったのは、やっぱり大きかった(^-^;
門は本当に大きく四天王が左右の壁に描かれている。
入り口横には大きなマニ車が設置されチベタン達がマニ車の手すりを持ち回っている。
ぼくは門をくぐり中に入ってみると僧房のような建物やお堂があって奥に進むにつれセー・ゴンパの全貌が見えてきた。
始めは人気がなかったけど大径堂近くに行くとチベタンの数も増え
コミカルな骸骨や護法尊の壁画が描かれたゴンカン(護法堂)の周りをチベタン達が熱心にコルラしていた。
ぼくは更に奥に行ってみたくなり仏陀の目が描かれたチョルテン(仏塔)に行ってみる。
金ぴかのチョルテンの隣にあるマニ・ラカン内は極彩色の壁画のオンパレードだった!
仏陀、カーラチャクラ、護法尊等チベット仏教の仏達や曼荼羅等が所せましと描かれていた。
す・・凄い。
と感動したのもつかの間、よく見てみると壁画ではなく何とプリントだった!
でもこれだけ沢山あると圧巻だけど(^-^;
チョルテン内は極彩色のマニ車が並びチョルテン内を一周するように設置されていた。
とりあえず、ぼくはマニ車を回しながら一周してみた。
何か功徳を得たのかも知れない・・。
ぼくは一通り見学すると次なるゴンパに向かう為、セー・ゴンパを後にした。
【ボン教寺院ナルシ・ゴンパとトクデン・ゴンパ】
アバにはチベット最大らしいボン教寺院ナルシ・ゴンパがある。
歴史あるナルシ・ゴンパは丘の上のバルマ村にあるのだが徒歩だと凄く時間がかかりそうなので
ぼくは一旦バスターミナル周辺に戻りゴンパに連れてってくれそうな人を探してみた。
バスターミナル周辺には
「成都!成都!」
と叫ぶチベタン達がいて、ぼくはその中の人に聞いてみた。
言葉が分からなくてもガイドブックに書いてあるナルシ・ゴンパの中国語名『郞依寺』とかを見せると分かってくれる。
話を聞いてみるとナルシ・ゴンパとトクデン・ゴンパ二つ行くと40元だというので20代位のお兄ちゃんが運転する車に乗り二つのゴンパに向かった。
始めに向かったのはトクデン・ゴンパ。
ナルシ・ゴンパの隣にある丘の上にあるゴンパで同じくボン教寺院だ。
で、さっそく向かったのだけれどチベタンのお兄ちゃん
行き方分からなくてゴンパへ続く道で右往左往してる。
結局通りかかった車の運転手に聞いてようやく到着。
車は大径堂前の広場にとまり、ぼくは本堂に行ってみた。
本堂では沢山の僧侶がお経を唱えていてとても中に入れそうな雰囲気じゃなかったのだけれど・・
車のお兄ちゃんがやってきてなんと僧侶と交渉してくれた!
そしてぼくとお兄ちゃんは修行中の本堂内に入り見学する事が出来た!
中は薄暗くボン教の神々の壁画で埋め尽くされ奥には本尊の仏像が鎮座していた。
途中十代後半位の僧侶が案内をかってでて本尊がある奥の部屋を見せてくれたりした。
また寺院の参拝方法で初めて知った事があるのだが、どうやらリンポチェ(座主)の椅子を通る際は深くお辞儀をしながら通らないといけないらしい。
本堂内を見学し終えるとリンポチェとおぼしき人物と接見しぼく達は深くお辞儀をしてトクデン・ゴンパを後にした。
次に向かったのがナルシ・ゴンパ。
看板もあり道も整備されているので車はあっという間にゴンパに到着。
大径堂内ではトクデン・ゴンパ同様、僧侶達が修行中でここでもお兄ちゃんの交渉で中を見学する事が出来た。
壁画や中の雰囲気、構造はトクデン・ゴンパとほぼ同じで、やはりここでも僧侶の案内の後リンポチェと接見。
そして帰り際リンポチェによる祝福とスカーフを受け取り見学を終えた。
因みに当然ながら大径堂内の壁画の写真は無く(撮影禁止だと思う)撮影出来たのは外にある四天王や六道輪廻図のみ。
ボン教と言ってもチベット仏教の壁画と変わりなくボン教の神々もまたしかり。
唯一撮影出来たマルカムのボン教寺院内の壁画達だけど、ナルシ・ゴンパ等にはこういった壁画で埋め尽くされているのだ!
やっぱりチベットの壁画は美しい・・。
二つのゴンパの見学を終えたぼくは満足したというのもあり、お兄ちゃんに40元の所60元渡し、ホテルに戻るのだった(単に細かいのがなかっただけど)
【尼寺スワラングミュ、カシ・ゴンパ、大僧院キルティ・ゴンパへ】
翌日ぼくは再びゴンパ巡りに出た。
時刻は午前11時昨日行った回族の食堂で昼を取ると街から八キロ先にある尼寺スワラングミュ(四洼尼姑庙)とカシ・ゴンパ
そしてアバのランドマーク的存在のキルティ・ゴンパに行くことにした。
食堂の近くでチベタン達がたまっていたので相談すると200元かかるという。
正直高いと思った。
昨日のボン教寺院も街から離れているけれどスワラングミュが200元を取るほど離れてるとは思えない。
それでぼくは値段交渉したのだけれど・・
駄目だった。
絶対に200元というので仕方なくその金額でお願いし目的のスワラングミュに向かった。
ドライバーは色黒で体格のいい50歳位のチベタン。
怖そうな人だったけど意外に静かな人で会話もほぼなく、車は丘にへばりつくように造られた尼寺スワラングミュに到着。
尼寺らしくシンプルで白を基調とした寺でドライバーが鍵番の人と交渉してくれたかいもあり大径堂内を見学する事が出来た。
本尊は確か弥勒菩薩(うろ覚えなので違ってるかもしれない)で女性的な優雅さが漂う壁画だった。
ここから眺める景色もまた絶景で気持ちいい風に吹かれながら広大な山々を眺めた後カシ・ゴンパに向かった。
カシ・ゴンパ(ゲルク派)は街の近くにある丘の上にあるゴンパで小さな村の中にある。
黄色い塀と緑の屋根が印象的なゴンパだったが人気が無く僧侶も数える程だった。
大径堂は鍵がかかり開いてなかったが近くのお堂ではサンが炊かれ僧侶が一人管理していた。
ぼくはそのお堂でお参りをすると、特に見学出来る場所もなかった為カシ・ゴンパを後にした。
最後に向かったのがガワ最大のゲルク派僧院キルティ・ゴンパ。
街の中にあり甘粛省と四川省の間にあるタクツァン・ラモ・キルティ・ゴンパの分院だ。
創建1412年という歴史ある僧院だが全貌が一回見ただけでは分からない程、巨大な寺で
タクツァン・ラモの寺並みに大きいのではないかと思った!
車は大チョルテン前に泊まりドライバーのおっちゃんと一緒に大チョルテン内に入って行った。
*内部に入るときは靴カバーが必要でそれを取り付けた後、入る事が出来る。
大チョルテンは四階まであり一階には千手観音が参拝者を出迎えてくれる。
そして何より一階にある古い壁画はぼくの目を楽しませてくれた!
骸骨姿の神様チティパティやターラー菩薩。
さらに女神やチベット仏教の祖師の壁画など、絵の参考になりそうな興味深い壁画達がそこら中に・・。
これは感動ものでした!
ぼくは、まるで案内をするかのようなおっちゃんの後を着いていき二階、三階と上がって行った。
上の階は天井が低く参拝する場所も設けられていた。
そして四階なのだけれど入り口が狭くて一見、入り口なのか分からないのだけれど
その先にある階段を登るとチベット仏教の始祖グル・リンポチェが鎮座する部屋に行く事が出来る。
他にもサンヴァラ等の仏像があって、まるでアバの街を見守ってるかのようだった・・。
見学を終えたぼくは車に戻りキルティ・ゴンパを何故か一周され本堂前の広場で停まった。
おっちゃんと共に本堂に行ってみると、そこにはホテルとも城ともとれる建物が!
デカイ・・。
黄色とえんじ色のコントラストに彩られた本堂前にいると
おっちゃんが僧侶を連れてきて鍵を開けてくれた!
内部もやっぱり大きくて仏像が3つ鎮座していた。
チャーター料200元と高かったけど、これだけのものを見れたので正直満足だと感じました!
もし一人で行ったなら入れなかったのは確実なので。
参拝後ぼく達は車に戻りホテルに帰ると、もう1日いたくなり支払いを済ませガワ2日目を終えるのでした。
【賑やかなチベタン達がいる街】
3日目は街歩きをメインにしてゴンパは初日に行ったセー・ゴンパまでにした(旅の費用を考えて)
それにブログで売るチベットの民族衣装も欲しかったので買い付けもかねてだ。
セー・ゴンパに行ってみると初日とは違い大径堂前に沢山の僧侶がお経を唱えているのかうずくまっていた。
しばらく見ているとリンポチェが現れ、その様子を見ている。
一体何が行われていたのか分からなかったけど
これだけ沢山の僧侶が集まると圧巻で信仰心が高い場所なんだと肌で感じる事が出来た。
その後ぼくは入り口前で日用品を売っていたチベタンからジェンゴとかいう防寒帽を買い付けると街を目指した。
ゴールはキルティ・ゴンパまで。
歩いてみてわかったのはホテルが多いバスターミナル周辺もゴンパ方面に行けば行くほど
人の数も増え賑やかになってきた事だった。
こういった人や店が多い場所では色々な物が売っている。
まずぼくが探したのは民族衣装のチュバ。
他のアジアの国同様、全体的にコンビニのような店は少なく専門店・露店が多い。
そういった店が集まっているので面白い物を発見出来る率が上がる。
歩いていると、やっぱりあった。
民族衣装店が集まるエリアが。
印象としては以前見たカラフルなチュバが沢山置いてあるカンゼの民族衣装店街と違い日常的に着る事を意識した
黒やグレー等じみ目なチュバを売っている店が多かった(既製品やオーダーメイト等)
因みに値段はあえて言わないけどネパールとほぼ同じで高かったので買わなかった。
ゴンパ周辺はやっぱり仏具店や僧服を売っている店が多くアクセサリーやビーズ等を売ってる露店等も。
値段は聞かなかったけど絶対日本で買うより安いんだろうな、と思う。
そんなものみ見物をしながらキルティ・ゴンパに到着。
昨日行ったチョルテンは閉まっていて入れなかったのでサンがモンモンと炊かれる近くのお堂をコルラ。
その後ホテルに戻り東北チベット・アバの旅を終えるのでした。
【アバ県バスターミナル時刻表】
バスターミナルのチケット売り場横に書いてある時刻表を元に書いてみた。
成都:6時30分・6時40分
都江堰:7時
ブン川:6時
合作:6時30分
マルカム:7時・11時30分
ザムタン:7時
久治:7時
紅原:7時・15時
金川:7時30分
黒水:7時30分
マチュ:6時
ゾルゲやタクツァン・ラモも書いてあるが行けるか不明。
【まとめ】
アバに行ってみて思ったのは本当にゴンパが多かったという事!
でも本当はここで紹介したゴンパ以外にも沢山のゴンパが郊外にあって、いつか行ってみたいと本気で思いました!
そして絵描きにとって様々な壁画を見れるので絶対おすすめ出来る街だと感じました。
雄大なチベットの山々、巨大な僧院の数々に信仰心高いチベタン達・・。
日本には無い非日常的なRPGのような世界があり、画家として充分過ぎるほどの刺激を得た旅でもあった。
これからもぼくはチベットを訪れ様々なゴンパ、壁画を紹介しようと思うので宜しくお願いします!