世界の中心須弥山として表されるカイラス山はチベットの遥か西方に位置し、チベット人達は五体投地を行い祈りを捧げながら巡礼する。
世界を旅する者なら一度は行ってみたい人類未踏峰の聖山だ。
カイラス山は四つの宗教(仏教、ボン教、ヒンズー教、ジャイナ教)の聖山として西チベットの奥地にそびえ、チベット人からカン・リンポチェ(尊い山)として崇められる聖地中の聖地だ。
リンポチェという言葉の意味は元々願いを叶えてくれる如意宝珠からきていて、その宝である仏法を導く福音をもたらす者として存在する。
リンポチェは本来、活仏や修行を重ねた高僧に与えられるものだがカイラス山の場合、チベット人や仏教徒を導く仏陀の象徴として崇められている。
詳しい事はこちらの記事に書いている。
そして信仰心高いチベット人達はこの聖山を目指しながら五体投地を行い遥か東方、東チベットからも巡礼しながらやってくるのだ。
ボクは東チベットを旅した際、乗り合いタクシーの中から五体投地を行い歩いている姿を見たことがある。
彼らは1人ないし家族連れで五体投地を行い聖地を目指して祈りを捧げている。
因みにフリーライターの長田幸康氏によれば、彼らは布施等で僅かな収入を得ながら旅をするようで、チベットの飲食店で旅行者と判ると物乞いをするチベット人は、ただ貧しい人達とのこと。
ボクは始め、物乞いしながら巡礼すると思っていたが、そうでは無かったようだ。
【五体投地とは?】
五体投地というのは全身全霊を投げだすチベット人お決まりの祈りのフォームで
やり方としては
胸の前で合掌し、その手を頭の上に、其の次に口元、胸、そして体をうつぶせにして伸ばす。
その手を合掌したあと起き上がり、それを繰り返す・・
当然、この方法で遥か彼方にあるカイラス山を目指すとなると途方も無い時間がかかる。
だがカイラス山を目指すチベット人達は仏教への信仰心と祈りだけを支えに身体を汚しながら、この大いなる旅を行うのだ。
【四つの宗教からなる聖山カイラス】
仏教、ヒンズー教、ボン教、ジャイナ教・・
カイラス山はこの四つの宗教から崇められる聖山だがそれぞれ捉え方は違うようだ。
仏教は須弥山として仏陀の象徴としてカイラス山を崇め、チベット仏教以前にあった土着宗教ボン教は開祖シェーンラップ・ミヨが君臨した山として崇められボン教教徒は仏教徒とは反対の左回りで巡礼する。
またインド発祥のヒンズー教に至っては破壊神シヴァの住む聖山として、またはシヴァの男根を象徴するリンガとして崇拝されている。
余談ではあるがリンガはシヴァの男根の象徴としてインドやネパールで信仰されているがネパール・カトマンズの街を歩くとチャイティヤと呼ばれる見事な彫刻を施された仏塔を見ることができるが、本来チャイティヤは仏教のものだが中にはチャイティヤとリンガが合体したものまである。
つまり仏教とヒンズー教は深い繋がりがあり神々のカテゴリー(ガルーダや大黒天等)からも分かるように切っても切れない存在なのだ。
■仏教とヒンズー教の関係とは?
そしてヒンズー教と同じようにインド発祥の苦行・禁欲主義の宗教ジャイナ教の聖山として崇められている。
カイラス山はこの四つの宗教から崇められ多くの信者がカイラスを目指しているのだ。
【カイラス山にいく方法】
西チベットの奥地にあるカイラス山に行くには一般的にツアーに参加するのだが許可証が必要だったり同じ国籍何人以上などと細かなルールがあり行きたいと言っても中々行く事が出来ない秘境中の秘境だ。
ボクの知り合いのとある女性の元旦那のネパール人が何人ものネパール人を引き連れカイラス山に行った事からも分かるように同じ国籍で大勢で行けばカイラス山に行けると思うから、どうしても行きたいという人は仲間を集めて行ってみてはどうだろうか?
因みにカイラスまでのルートはラサからカイラスに向かうパターンとカトマンズからカイラスに向かうルートの2種類がある。
ネパールのタメルでは西チベットやラサツアー、ブータン旅行まで色々揃っている旅行会社が多数あり便利な所だ。
ただ、怪しいネパール人も多いので要注意・・
【カイラス山をコルラする】
カイラス山をコルラ(巡礼)すると様々な巡礼スポットを目にする事が出来る。
以下はカイラス山にあるゴンパ(仏教寺院)や聖地である。
■チュク・ゴンパ
ドゥクパ・カギュ派僧院で13世紀に建設された。(80年代に再建)
宿坊に泊まることが出来る。
■ディラ・ブク・ゴンパ
ディラとは牝牛の角という意味を持つ13世紀に創建されたドゥクパ・カギュ派の僧院で、こちらも泊まることが出来る。
■ヨクモ・ツォ(ゴーリクンド)
ドルマ・ラを下ると見えてくる聖湖で、言い伝えによれば仏の化身である赤ん坊が、この湖に落ち、消え去ったとされる。
後に神様が子供が落ちないように氷をはったという伝説がある。
■ズトゥル・ブク・ゴンパ
詩人ミラレパが開いたゴンパで、ボン教徒ナロ・ボンチェンがカイラス山の覇権をめぐり争った場所である。
ミラレパが瞑想した石窟もある。
■ミラレパについてはこちら
チベット人では無くても、1度は行ってみたいカイラス山。
この聖山に行く事が出来れば、人生観が変わるほどの衝撃を受けるだろうとボクは思っている。
だからこそ、巡礼者やカイラス山を目指す旅行者が後を絶たないだと思う。