観音菩薩の必須アイテム『蓮華(パドマ)』の持つ意味と起源とは?

仏教において蓮華(サンスクリット語:『パドマ』チベット語:『ペマ』)とは

『泥の中から生じて泥に染まらずに清らかさを保つ』という意味から仏の智慧に例えられている。

そういった事からチベットやネパールといった仏教圏では様々な所で仏像の持ち物や壁画などで蓮華を見ることが出来る。

【蓮華の起源】

蓮華の起源ははっきりわかっていないが古来より、女性の性器のシンボルとして用いられてきた。(世界を創造する女神の性器を意味する)

 

仏教では釈迦が神格化された後、礼拝の対象の一つとして崇められてきた。

これは、釈迦が仏像として礼拝される以前の話で、初期の仏教徒にとって釈迦は悟りを開いた偉大な存在として仏像を造る事を厳しく禁じたからだ。

 

その為、仏教徒は『蓮』を礼拝の対象としたが他にも『法輪』『仏塔』『菩提樹』等が釈迦のシンボルとして礼拝されてきた。

釈迦のシンボルには様々な意味があるが『蓮華』の場合、誕生のシンボルであり、釈迦が誕生した時に七歩歩いて蓮華が咲き出したという伝説が由来とされている。

因みに『菩提樹』は成道のシンボル。『法輪』は説法のシンボル。『仏塔』は釈迦の骨(仏舎利)を収めた塔の事で、涅槃のシンボルとして仏教圏では数多く建てられている。

特にチベット文化圏の仏塔(チベット語でチョルテン/サンスクリット語でストゥーパ)は装飾的で写真でも判るとおり、さながら仏教美術のようである。

【蓮華の持つ意味】

蓮華は汚れる事の無い仏の真理(智慧)であり、慈悲の菩薩である観音菩薩の持ち物として仏画では必ずといっていい程、描かれている。

また、蓮華が描かれる場合『つぼみタイプ』『半開タイプ』『満開タイプ』の3種類があり、菩薩達はピンクや白の蓮華を手に持っている。

 

蓮華の色の意味として、白の蓮華の場合『智慧の菩薩である文殊菩薩とターラー菩薩』のシンボルであり、心の清らかさの象徴である。

ピンクの蓮はチベット仏教におい『太陽』のシンボルとして様々な菩薩が持っている。

 

半分咲いた蓮華はウトパラという『自己の創造』のシンボルである。

 

また、チベット仏教では蓮華は吉兆模様の一つとして寺院の壁画に描かれている場合があるが、その場合、8つの吉兆模様と組み合わさったものが描かれる事が多い。

チベット仏教の8大吉兆模様については

■宝傘(ドゥク):平安の象徴

■勝利の幡(ギャルツェン):仏教の教義の勝利

■法輪(コルロ):仏教の教えを広める。

■瓶(ブムパ):不死の甘露アムリタが蓄えられている宝物

■ホラ貝(トゥン):仏陀の解脱を告げるホラ貝の音

■永遠の絆(ペルベウ):慈悲の象徴と愛と調和

■蓮華(ペマ):清らかさの象徴

 

菩薩の持ち物は蓮華の他、宝剣や金剛杵等、数多くあるが持ち物一覧についてはこちらの記事を参考にしてほしい。

チベット仏教の仏達が持つ法具の意味とは?『金剛杵から頭蓋骨の杯等20選』

【蓮華の名を持つ仏達】

仏の象徴である蓮華は、特にチベット由来の仏達の名前順によく使われている。

 

例えば『パドマサンバヴァ』

パドマサンバヴァはチベット仏教の始祖であり、グル・リンポチェ(導師様)と崇められるほどチベット人に人気の人物。

彼の名前の由来は『パドマ』は蓮華『サンバヴァ』は生誕地を意味している。

これは彼が蓮華の花の上に座っていた事が由来していて、後に王子~密教行者となり様々な伝説が語り継がれていく。

(最期は虚空の彼方に消えていったというが本当だろうか?)

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また、パドマパーニ(蓮華手)は蓮華を手に持つ者の意味で、左手に蓮華を持ち、右手に予願印(何でも願いを叶える手の仕草)を結ぶ菩薩である。

 

パドマジャーラ(蓮華網観音)はヤブユムの形をとる珍しい菩薩であり、『オム・マ二・ペメ・フム(蓮華の中の宝珠よ幸あれ)』という観音菩薩の真言が神格化した尊各である。

 

因みにパドマジャーラは抱き合う男尊女尊共に蓮華と金剛杵(ヴァジュラ)を手に持っているが、男性(金剛杵)と女性(蓮華)の隠喩的な意味を持っている。

 

これはチベット仏教においてヤブユム同様『智慧と方便』を意味していて、悟りへの道筋である。

また、ヤブユムとは男尊女尊が抱き合った姿であり、チベット仏教では数多くのヤブユムの姿をとる仏達を見ることが出来る。

名前には使われていないが蓮華を持っている菩薩で有名なのがターラー菩薩。

彼女は衆生を救うため観音菩薩から生まれた女神であり緑ターラー菩薩、白ターラー菩薩が一般的であり必ず左手に蓮華を持っている。(因みに右手は予願印を結んでいる。)

このような蓮華の名を持つ仏達が多くいるのは観音信仰が盛んなチベットならではであり、日本では馴染みの無い仏達や仏教文化が数多く存在している。

また、記事で使われている画像はボクが実際にチベットに行って撮ってきた物ばかりで、日本の仏教美術にはない華やかさが感じられる。

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