チベット仏教の仏達が持つ法具の意味とは?『金剛杵から頭蓋骨の杯等20選』

チベット仏教の神仏が持つ法具は一見武器のような物(金剛鈴や金剛杵)やグロテスクな物(生首の首飾り等)まで様々あり、中には実際に存在しているものもある。

例えばラダックのチベット仏教寺院に行くと、チベット仏教美術・法具のミニ・ミュージアムのような部屋があり、中には数多くの法具や仏像等が展示されていたりする。

このような部屋に展示されているのは歴史的に価値のある骨董品ばかりだが、法具は今でも僧侶達の修行や瞑想に使用され続けているのだ。

 

そこで、今回この記事ではチベットの神々が持つ法具や武器といったものを紹介し、謎に包まれたチベット仏教を垣間見ようと思う。

 

■金剛杵

金剛杵(ヴァジュラ)とはチベット仏教に限らず、日本の真言宗でも使用される法具の中で最も有名なものだと思うが、金剛杵は一見武器のようにも見える。

金剛杵の原点はインド神話の英雄神インドラにあり、彼は魔神を倒すためにソーマ酒を飲みながら雷と同じ威力がある金剛杵を手に持ち、魔神を倒したという逸話がある。

インドラは仏教において帝釈天となり、金剛杵の性格も煩悩を打ち倒すという意味も含まれるようになった。

 

また金剛杵が神格化したともいえるチベット仏教の金剛手という菩薩がいるが、手に金剛杵を持ち、魔を払うとされている。

その性格の為、魔除けの為、護符に描かれたりチベット仏教寺院に仏像が造られたりしている。

伝説の武器を持つ怒りの仏チャナ・ドルジェ(金剛手菩薩)とは?

■金剛鈴

チベット仏教寺院に行くと、稀に僧侶達の修行風景に遭遇する事がある。

 

彼らは熱心に経を唱えていたが金剛鈴の

 

リンリンリンリン

 

という音と共にチベットラッパの音が鳴り響き、美しい宗教音楽を奏でていたという光景を目にした事がある。

金剛鈴は片方が金剛杵の形をとり、もう片方は鈴の形をとる金剛鈴の性格は、その音をならし神々を歓喜させるという意味を持っている。

これはチベットホルン『トゥン』にも通じる事で、恐らくボクが見た修行の中で数多くの楽器が使われたのは神々を歓喜させ呼び込む為に、このような音が出る法具・楽器を使われるのだと思う。

 

■宝剣

宝剣と言えば文殊菩薩や不動明王の持ち物として有名だが、これは煩悩を断ち切る為に存在している。

因みに金剛鈴や金剛杵といった法具は製作されているが、宝剣は作られていないとボクは思っていた。

しかしネパールのチベット仏教の聖地ボダナートの法具店に行くと、文殊菩薩や不動明王が持っている宝剣が売っていた店を見た事がある。

 

ただし、本物の剣のような立派な物では無く、簡易的な銅板を打ち付けたような平たいものだったが・・。

 

■短剣(プルブ)

「釘」「抗」を意味するプルブは長い三角の刃をもち、柄に金剛杵や尊格の頭部がついた短剣だ。

これはマントラ(真言)の力を具現化したもので、僧侶達が儀礼の際、マントラに力を与えるため使用される。

 

 

タンカ(チベット仏画)の中にはプルブが神格化したものがあり、柄の部分が神様という異様な仏画も存在する。

 

 

ボダナートのニンマ派僧院にはプルブの尊格がヤブユム(男神と女神が抱き合った姿で描かれたもので、意味は智恵と方便は悟りへの道)の状態をとった壁画があり、エロティックながら想像力溢れる絵だと思った。

 

■弓と矢

赤ターラことクークッラーの持ち物であり、数多くの神々がもつ弓と矢はヤブユムの意味と同じで、弓は方便で矢は智恵を表す(方便と知恵は悟りを開くために必要な事)

 

■数珠

マントラを唱える事で、そのパワーを発揮できる数珠だが、チベット人の持ち物として有名であり、彼らは毎日数え切れない位マントラを唱えている。

これは亡くなった人の魂が天国へ正しく向かわせるために唱えているんだそう。

因みにネパールには沢山の仏具屋があり数珠の専門店まで存在するが値段はピンキリで日本円で100円未満のものから10000円以上する数珠もある。

素材も様々で天然石や木材、ヤクの骨を使ったもの等様々だ。

以前ネパールでボクは安い数珠を買って知り合いの仏教徒のネパール人に見せたら

 

笑いながら、こんな安いのじゃあ天国に行けない!

 

とか言っていたが数珠の良し悪しで天国に行けるんだろうか疑問である笑

 

■法輪

法輪はブッダの教え・真理を表し、チベット仏教寺院のシンボルとして必ず寺院上部に両脇にある伝説上の生き物と共に設置されている。

チベット仏教寺院に行っても屋根の上にあったり中々、法輪に近付く機会は無いがボダナートにある三階建てのニンマ派寺院に行くと法輪を直ぐ近くで見る事が出来る。

また、この寺院から眺める事が出来る巨大ストゥーパの景色は最高!

■曲刀(ティグ)

ティグとは片方が金剛杵の形で、グニャンと曲がったS字型の刃先がついた武器の事で、無知を取り除くシンボルとして創られた。

仏の持ち物としてはマハーカーラ(大黒天)等、忿怒の仏がカッパーラと共にティグを持った姿で表現されている事がある。

■髑髏の杯

カッパーラと言い人間の頭蓋骨をくりぬいて出来た髑髏の杯である。

ネパールの骨董屋や仏具屋等にはカッパーラが売っている事があるが、これは人間の頭蓋骨では無くヤクの骨で作られたものなんだそう。

とある骨董屋の店主にカッパーラの事を色々聞いていたら

 

本物の頭蓋骨のカッパーラが欲しい?

 

とか聞いてきたが丁重にお断りしました(本物は仏教寺院で僧侶達によって使われているのかもしれない)

またチベット仏教の仏へーヴァジュラやヘールカの妃達が持っている髑髏の杯は血に満たされている事があるが、これは生命力を象徴している。

他にも様々な仏達が手に持っている。

■生首の首飾り

チベット仏教の忿怒尊や女神達が首から下げる首飾りにはゾッとするような人間の生首や頭蓋骨が幾つも連なっている。

これは個人に死をもたらす「時」の象徴であり、歴史的に見ればヒンズー教からの影響が大きいでしょう(破壊の女神カーリーは生首の首飾りをしている)

 

■象の皮

象は力強さの象徴であり、これが転じて象のような力強い衝動のコントロールを意味する。

 

■ダマル太鼓

ダマル太鼓はチベット版でんでん太鼓のようなものであり、僧侶達が儀礼の際使用する。

またヒンズー教の破壊神シヴァの持ち物であり、仏教に取り入れられた際「真理」の象徴として位置付けられた。

音色はでんでん太鼓のような音をしていて実際に聴いた事があるが、やっぱりでんでん太鼓だった!

 

■蓮華

蓮華(パドマ)は「慈悲」「女性原理」の象徴として観音菩薩やタラ菩薩が手に持っていて、チベットの吉兆模様として、しばしば寺院内に描かれる。

蓮華には様々な色がありピンク、ホワイト、水色が一般的

■瓶

ブッダの教えに従う事で得られる不死の甘露(アムリタ)が入っていて吉兆模様としても描かれる。

 

■払子

精神的に苦悩し迷っているさい、これを追い払う為にある。

 

■蛇

大地が持っている生命力、創造力の象徴。

因みに蛇と言えばヒンドゥー教の異形の神様ナーガを思い浮かべる事が出来るが後に仏教に取り込まれ仏法を守護する存在となった。

下半身が蛇!ヒンドゥー教の異形の蛇神ナーガと仏教の関係とは?

■ホラ貝

真理へと導く音として僧侶達の儀礼の際使用される。

 

■鎖

因果の因と果を繋ぐ鎖

 

■頭皮

霊的な力が宿っていて、頭蓋骨から剥がされた皮。

 

■斧

妄想の根源を断ち切る道具

 

これら武器、法具等は神々が図に表した際、手に持っていて、その尊格の性格を表しているために表現される事があるためチベット仏教や実際にチベット仏教寺院に行った際、この情報を参考にしてほしい。

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