下半身が蛇!ヒンドゥー教の異形の蛇神ナーガと仏教の関係とは?

RPGゲーム等をやっていると下半身が蛇で上半身が人間の異形のモンスター『ナーガ』が登場する事がある。

ナーガとはインド神話に登場する蛇神で、恐怖と不死のシンボルとして信仰されている。

仏教においてもナーガは水の神、河の神として信仰され『法華経』というお経の中では釈迦の説法に集まった僧侶・一般の聴衆の他に『非人』と呼ばれる八部衆が集まったとされる。

この八部衆とはヒンドゥー教やゾロアスター教等を由来とする神々であり、この八人の中に蛇神ナーガや有名なアシュラもいるのだ。

 

【法華経の八部衆】

天:調伏された善なる古い神々

ナーガ:水を司る蛇神

ヤクシャ:元々は悪神だったが仏教に取り入られてからは、仏教を護る神となった。

ゲンダツバ:帝釈天の眷属であり、イランを起源にもつ神

■アシュラ:ゾロアスター教の最高神アフラ・マズダーが由来とされる三面六臂の戦闘神

カルラ(ガルーダ):ヴィシュヌ神の乗物で大いなる聖鳥

キンナラ:半獣の神であり、ケンタウロスと関連があるとされる神

■マゴラカ:帝釈天の眷属、竜神の一種とされる。

このようにナーガは他の神々同様、仏教を護る神にされ、日本のみならずチベットにおいても信仰される。

【蛇神ナーガの神話】

『蛇王タクシャカ』という神話において蛇を敵に回すと恐ろしい事になると書かれている。

この神話の内容はこうだ。

『パリークシット王という人物は狩猟の愛好家であった。

王はある日、鹿を狩るため森奥深く進んでいった。

すると王の前に聖者が現れた為、

 

 

「鹿は知らないか?」

 

 

と聖者に尋ねた。

 

聖者は無言の行を行っていた最中であった為、沈黙したままであった。

 

 

無視されたと思い、怒り狂った王は、近くに落ちていた死んだ蛇を聖者の首にかけ、その場を立ち去ったのだった。

 

その後、王の行いを知った聖者の息子は王に呪いをかけるのだった。

 

「父を侮辱した王よ。7日以内に蛇王タクシャカに殺されてしまえ。」

 

呪いをかけられていると知ったパリークシット王は湖の上に頑丈な宮殿を建設し、虫一匹たりとも近づけさせないようにした。

 

王を呪い殺そうとするタクシャカは苦行者の供え物の果物の中に小さな虫となって忍び込んだ。

 

王が宮殿に潜伏し、既に7日がたち、太陽が沈もうとしていた。

 

王は

 

「もう呪いの日は終わろうとしている。

せいぜいこの虫が噛みつこうとしているくらいだ!」

 

と、その瞬間

 

果物に忍び込んだ虫(タクシャカ)は元の姿に戻り、王を嚙み殺してしまった。

 

そして、その毒で宮殿を焼き払ってしまった。』

 

と神話は語っている。

 

因みに蛇王タクシャカのような強い力を持つ蛇の事をマハーナーガ(大いなる蛇)やナーガラージャ(蛇王)と呼ばれ人々から畏怖されている。

 

【壁画に描かれる蛇たち】

チベット仏教寺院の壁画を見ると四天王の壁画と共にナーガが描かれる事もあり、仏教に取り込まれたという事を象徴しているが、同じ蛇でも六道輪廻図に描かれる蛇は意味合いが違ってくる。

 

六道輪廻図とは仏教における死後観を描いたものであるが、業によって生まれ変わる世界が変わってくる六つの世界を描いた様子の中央には『蛇・豚・鳥』が描かれている。

 

この3つの動物たちはそれぞれ『怒り(蛇)』『愚かさ(豚)』『欲望(鳥)』を意味している。

また、ガルーダは蛇をくわえた姿で描かれたり、蛇を体中に巻き付けた姿の仏像を見たりする事があるが、これは強力な力である蛇を支配するという宗教的な意味合いがあるが、ガルーダと蛇が犬猿の仲という事も大きいだろう。

アジア諸国で信仰されているガルーダについての記事はこちら

仏教の天使“迦楼羅(カルラ)”誕生はヒンズー教神話にあり?

神話において、蛇たちは鳥たちを虐げる存在と描かれガルーダがヴィシュヌ神の乗物になるまで蛇が優位だったのだ。(鳥と蛇が賭けをして、鳥が負けたため)

因みに、この記事で紹介している写真はコパン・ゴンパに描かれている壁画であり、他のボダナートの仏教寺院の壁画よりレベルが高いという事が見て分かるだろう。

コパン・ゴンパはネパールのボダナートを見下ろす小高い丘の上にあり、世界的仏教組織FPMT(大乗仏教保存財団)の仏教寺院でもある。

このチベット仏教寺院には瞑想体験をする外国人が沢山いて、一般の人でも参加する事が可能な為、興味のある人は行って欲しい。

 

また、ボダナートにはコパン・ゴンパの他にも瞑想体験やチベット仏教を学べるチェキ・ニマ・リンポチェのホワイトゴンパ、タンカ(チベット仏画)を本格的に学べるシェチェン・ゴンパ等、20以上のチベット仏教寺院があり、チベット好きにはたまらない聖地だ。

以下の記事はボダナートの20以上あるチベット仏教寺院のリストである。

『チベット仏教の聖地ボダナートの寺院一覧表』行き方・注意点のまとめ

チベット仏教寺院の壁画のメインは四天王や護法尊だったりするが、よく見てみると蛇等の小動物を見ることができ、ボクはそんな脇役達を発見するのも寺院鑑賞の小さな楽しみだったりする。

 

因みにチベット仏教はヒンドゥー教の影響が強い為、数多くのヒンドゥー教からイメージをとった神々が登場する。

ヒンドゥー教とチベット仏教の関係についての記事も参考にして欲しい。

チベット仏教『曼荼羅の歓喜仏ヤブユム』歴史に隠された意外な真実!!

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