仏画絵師であるボクが絵の勉強の為によく行くネパールはお釈迦様が誕生した国だ。
それを象徴するように繁華街タメルの路地を進むとアショーカ仏教寺院という場所があり、そこに『誕生仏』の仏像がヒッソリと安置されている。
誕生仏とはお釈迦様の赤子だった頃の姿の事で右手を挙げて蓮華座に乗っていることが特徴だ。
【お釈迦様誕生秘話】
お釈迦様が誕生したのは現在のネパール西部に位置するルンビニ園だ。
ルンビニは仏教の聖地だけあって中国、チベット、日本、タイ寺等世界中の仏教寺院が点在する観光客に人気の観光スポットだが
はるか昔ルンビニ園を訪れたシャカ国のマーヤ(摩耶)夫人は産気づいて右脇からお釈迦様を生んだとされている。(マヤ夫人は生んで程なくして死去)
するとどうでしょう。
信じられない事に天地は祝福をあげ雨を降らせて、その場所を清めた。
生まれたばかりのお釈迦様は直ぐに七歩歩いて
「天上添加唯我独尊」
と喋ったという。
これは自分こそが天の下よりも上よりも尊い者であるという宣言であり、お釈迦様はこの後、王宮に向かえられ『シッダールタ(目的を成就した者)』と名付けられる。
因みに『シッダールタ』という名前が始めて現れたのはブッダの生涯をかいた『ブッダ・チャリタ』でお釈迦様の死後数百年後の話なのだ。
また、お釈迦様はゴータマ・シッダールタと言われる事があるが『ゴータマ』とは氏族名の事である。
お釈迦様は王宮で成人するまで何不自由なく暮らすが世の中の真実を知り29歳の時に出家し、後にブッダなるのだった。
【シャカ国は一体どこだったのか?】
シャカ族の都カピラヴァスツの王宮に暮らしていたお釈迦様だったが、その場所が一体どこにあったのか実はよく分かっていない。
日本の邪馬台国のようにシャカ国があったのは2500年も昔の事で場所が特定出来ないのは仕方ない事なのだが候補地としては二カ所ある。
一つ目はルンビニから西に24キロ先にあるティラーウラコット遺跡だ。
この遺跡には城塞跡や仏塔跡、ブッダとなったお釈迦様が帰郷したさいに立ち寄ったとされるニグローダ樹園跡もあって信憑性が高い。
もう一つはインド領にあるピフラワ遺跡。
この遺跡からは仏舎利(ブッダの遺骨を納めた壺)が発見されているが周辺には僧院跡のような場所しかなくすこぶる怪しいがインドではそういう事になっている。
因みにストゥーパ(仏塔)は仏舎利を納めた塔の事を言い、仏教文化圏各地で見ることが出来る。
【釈迦誕生の始まりは一人の修行者だった。】
ネパールには四大仏教の聖地というべき『ボダナート』『スワヤンブナート』『ファルピン』『ナモーブッダ』という聖地がカトマンドゥ盆地各地にある。
ボクはこういった聖地巡りが好きで壁画を見るべくボダナート等にあるチベット仏教寺院を巡礼している。
この中でナモーブッダは釈迦の前世である美しい王子が餓え死にしそうな虎の為に身を投げた話の舞台として知られている。
お釈迦様は仏として誕生するまでに実は様々な生物に生まれ変わっていたが、その始まりはヒマラヤに住む一人の修行者だった。
彼の名はスメーダ(善慧という意味)
聖都アマラワティーに住むお金持ちのバラモン僧だったが『悟り』を得るため旅に出たのである。
その後スメーダは山中に籠もり、僅か7日間で神通力を取得。
神通力で空を飛び回る内、ディーンパンカラ(燃燈仏)来迎の話を聞きつけたスメーダは彼の地におもむき来迎したディーンパカラから仏になる保証をもらったのだった。
スメーダはその後、何度となく生まれ変わり最終的にゴータマ・シッダールタとなり仏となることになる。
これが仏誕生までの経緯である。
余談だがお釈迦様ことゴータマ・シッダールタはシャカ国の王子だったが徳の高い人は元々王族だった人が多い。
例えばチベットに密教を広めたインド人行者パトマサンヴァパ(グル・リンポチェ)は元々王子だったし、カルマカギュ派の開祖マルパの師匠ナロパや、その師匠ティロパも王子だった。
つまり徳の高い人は前世でいい行いをしているから来世は王族として生まれ、多くの人を救うため出家して悟りを開く『仏』もしくは宗教の開祖になり人々を導く定めになるんだと思う。
因みに仏(如来)とは真理を悟った存在であり、釈迦の他にも大日如来や薬師如来と言った様々な仏達がいる。
詳しくはこちらを読んで欲しい。
【お釈迦様の誕生を祝うお祭】
日本では四月八日がお釈迦様が誕生した日とされている。
この日になると毎年『花祭り』が行われ誕生仏に甘茶をかけてお釈迦様の誕生を祝っている。
ネパールのバイサク月(四月~五月頃)になるとスワヤンブナートと言った仏教の聖地で誕生を祝う祭りブッダ・ジャヤンティ(BuddhaJayanti)が開催される。
バックパッカーの聖地であるネパールは祭りだけでなく様々な所にお釈迦様や仏教の神々の仏像があって仏像・仏画に興味の無い人でも楽しめる国なので一度は行って欲しい国だ。