チベットを旅する画家の宮下です。
今回お届けする記事は木版画の作業工程のお話です。
絵とチベットに関するブログなのに何故に木版画と言いますと
絵の商品作りの一貫として版画というものに以前から興味があったのです!
世界的に有名な芸術家のピカソもやってましたからね!
が、全くの初心者であるぼくが初めてやってみて思ったのは・・
工程が沢山あって覚えるのが難しいって事でした。
正直なめてました。絵のように上手くいくのではないかと。
どんな事でもそうだとは思いますが初めてするというのは中々大変というです。
さて!
初心者のぼくが木版画を掘ってみて失敗した事や準備する物、作業工程について書いていこうと思います。
【木版画制作に必要なもの】
ぼくに木版画を教えてくれた先生と出会ったのは羊画廊のパーティーでの事だった。
この日、アーティストの方々が集まり立食パーティーが開かれたのだが、そんな時に出会ったのが銅版画家の和田さん。
天使やキリストをモチーフとした銅版画を制作している彼と話している内に彼もタンカに興味があるという。
ぼくは以前より気になっていた版画のやり方を教えてもらえないか頼む事にした。
彼はぼくのお願いを快く承諾してくれた。
連絡先を交換したその後、木版画制作に必要な物をぼくに教えてくれた。
必要なものは次のとおり。
・板木
・水彩絵の具
・和紙
・試し摺りのための鳥の子と呼ばれる紙
・筆
・板面に絵の具を広げるための専用ブラシ
・板木がずれないように摺るための見当と呼ばれる木
・バレン
・和紙を濡らすための黄ボール紙と呼ばれる厚紙2枚
・彫刻刀各種
・ヤマト糊
・水張りテープ
一通り揃えるとだいたい7000~8000円かかるのだが、ぼくは必要な物を買うと早速版木(掘るための板)にお釈迦様を描いてしまった。
失敗してしまったのが買った版木が小さいサイズの物で、そこに細かな絵を描いた事で掘るのが大変になるのが後々気付く事に。
因みにぼくは版木にシャーペンで時下に下書きをしたが、この他にカーボン紙で複写する方法がある。
この場合、版木のサイズに合わせて紙に下書きをした後
版木の上にカーボン紙、さらにその上に下書きの紙を敷き線をなぞって複写するのだ。
【制作工程】
木版画は和田さんのアトリエで教えてもらう事になった。
アトリエには数々の銅版画作品や資料が置いてあり版画家さんの部屋といった感じ。
さて
一作品作るおおまかな流れは次のとおり
①和紙を刷れる状態にする。
②版木を掘っていく。
③バレンで刷っていく。
④刷ったら乾かす。
⑤完成。
それでは実際に教えてもらった事を具体的に書いてみました!
まず刷るために必要な和紙を切る事から始まった。
和紙は必ず定規に合わせ手で切っていきハサミは使ってはいけないとの事。
次に黄ボール紙二枚を水で濡らし(ハケを使う)
二枚の紙の間に先ほど切った和紙を入れ、黄ボール紙ごとビニールに入れる。
*和紙は一日入れておく事。
これが終わったら版木を掘る準備に取りかかります。
まず版木を掘る前に黄緑の水彩絵の具で塗る事が必要で理由は
水彩絵の具で塗る事で見にくくなっている下書きの線を分かりやすくする効果がある。
因みに塗るためのブラシは使う色ごとに必要で、塗り終わったらブラシを立てる。
絵の具が乾いたら、いよいよ版木を削っていきます。
版木は見当という台の上に置いて作業します。
これからやるお釈迦様の版画を削る上で勧められたのは三角刀。
これは細かい所を掘る為に必要な彫刻刀だ。
この三角刀で削っていく事を線彫りといい、ぼくがシャーペンで描いた線に沿って削っていった。
ぼくが下書きに手を込めすぎた為か完成するまで時間がかかってしまったが
もう少しデザインを大まかなものにすれば良かったと今になって思う。
全て削り終わったら版木の下に濡れた新聞を置きます。
そしてヤマトのりと透明な水彩絵の具をまんべんなく何ヵ所も付けていく。
ヤマトのりを使うのは版木に塗った色を和紙に定着させるため。
塗り終わったら、いよいよ和紙に刷っていきます。
版木の上に和紙を置き、その上に薄い当て紙を敷いてバレンで刷る。
アドバイスとして刷るときはおもいっきり力を込める。
あとバレンの線に合わせ平行・同じ方向にする。線と違う方向に刷るのはNGとの事。
終わったら水張りテープで板に貼り付けて乾かしていきます。
水張りテープというのは水に付けると粘着する美術道具で、ぼくも絵を描く際キャンバスの裏側に張り付けている。
一日乾かした後、水張りテープの中にカッターを突っ込んで剥がす!
作品として残す場合剥がした後、絵の左下に何部刷ったのか(例:1/30 この場合30刷った内の1枚という意味)
真ん中にタイトル、右下にサインを書いて完成です。
これが教わった木版画の作品を作る為の工程ですね。
因みに今回ぼくは一色で刷ったが何色も使う場合は色ごとにブラシが必要で塗りたい場所ごとに使い分けていく。
実は教えてもらった後、前から見てみたかったUsbメモリーの内容を彼のパソコンの中で見せて貰いました!
なんと中には膨大な数のチベット仏画を描く為の数値や仏の画像のデータが!
このusbメモリーは以前、成都に行った時にチベット人彫り師のサキさんから貰ったものだがタンカ(チベット仏画)を描く為に必要なデータばかりでしたね。
パソコン買わないといけないな・・と思いましたね。
成都でのサキさんとの出会いの話はこちら
【失敗談】
実は完成してわかった事だが、刷り終わったお釈迦様が左右反対になっていたのだ!
なんと右手の触地印をが左手になっている!
という事で掘るときは完成した時の状態を考えて左右反対に掘っていく。
といっても中々難しいと思うので下書きテ普通に描いた後
写真を撮り画像加工アプリで左右反対にさせて改めて描いた方が失敗しないと思います。
あと和紙が乾いていない状態で刷るとにじんでしまうので、完全に乾いた状態にしないといけない。
その為に時間をかけて和紙を乾かすのが必要なんだろう。
【まとめ】
全くの初心者として挑んで思ったのは当然ながら版画は絵とは違うので難しさもあり作品として残す場合
絵と同じように長く長く制作していく事が大切だと感じました。
ぼくの絵の商品化計画はどうなるか分かりませんが出来るならチベット的な物を作ってみたいですね。
版画は元々宗教を人々に広める為に作られたらしく、東チベットのデルゲパルカンでは今なを宗教目的の木版を刷っているので
チベットを旅する画家としてはいつか行ってみたい場所の1つです。
周辺には大きい寺も多くネパールにあるチベット画を教えている学校があるシェチェン・ゴンパの本家がある!
話がそれてしまったが以上初めて木版画を作ってみた、ぼくが学んだ制作工程と作る為に必要な道具の紹介でした。