ぼくはマンガの専門学校でアクリル絵の具を学び、ほぼ独学で10年以上アクリル画を描いてきたが
ある日、幼なじみの友達が似顔絵制作の依頼をしてきた。
ぼくは似顔絵専門で描いているわけではないので似顔絵の一般的な描き方はよく分からなかったが
絵の依頼はどんなものでも応えようという思いで絵を描いているので似顔絵の依頼を引き受けた。
内容は結婚した友達の奥様とのツーショットのウェルカムボード風の絵だった。
今まで似顔絵は描いた事がなかったが人物画と思えば思いの外、筆が進み完成する事が出来た。
気を付けたのは、おめでたい絵なので華やかにするという事。
背景に桜舞う空と二人の絵の回りに細かな装飾的な縁を描いていく。
アクリル絵の具で描いているので似顔絵師さんがコピックや色鉛筆で描く以上に時間がかかる。
ただしメリットととしてアクリル絵の具を使うという事は
失敗出来ないコピックや色鉛筆の絵とは違いジェッソと呼ばれるキャンバスの下地を塗る白い液体の画材を使えば、いくらでも修正出来るという事。
詳しい事は後程説明するとして、二人の写真を見ながら何度か修正して完成する事が出来た。
友達ご夫婦も気に入って下さり数年後、子供が産まれた際に再び似顔絵制作の依頼が頼まれたのである。
前置きが長くなってしまったが今回ご紹介する記事はアクリル絵の具を使った似顔絵の描き方と題して
各種画材の使い方やぼくがどのように似顔絵を描いたのか?をご紹介しようと思う。
【似顔絵を初める前に完成予想図を描く】
まず本番に入る前に依頼人にどのような完成品になるのかを絵で伝える必要がある。
なので今回のアクリル絵の具による似顔絵の依頼の際もボールペンで簡単な完成予想図を描いて相手に見せるのだが
ぼくの場合2パターン位描いて友達に選んでもらった。
服装の指定は無かったので大正ロマン風の衣装を着たご夫婦のボールペン画を描いてみた。
一つは洋装。もう一つは着物と軍装というもので最終的に洋装という事になった。
何パターンかある事で相手が求めている絵というのが分かるからだ。
完成予想図が大丈夫そうなら、その絵を元に描いていくし修正が必要から微調整をしながら描いていく。
因みに絵を描く際に気をつけたのは似顔絵なので出来るだけ似せるという事。
写真を見ながら髪型や眉毛、顔の雰囲気等を本人に寄せるのだが
元々漫画家を目指していたという事もあり全体的にデフォルメしていった(リアリティーある人物画が描けないというのもあるが)
例えば目や髪型の雰囲気をマンガ的にしたりといった具合に。
方法としては誇張するという事。
漫画に登場するキャラクターとかを見ると表情が豊かで目や口が大きく誇張された描かれ方がよくされる。
あと、ぼくの絵はマンガのキャラクター風に描いているが似顔絵師さんが描く絵は丸・逆三角・四角を意識して描いているという事がある。
これは顔の形を丸・逆三角・四角のどれかにあてはめデフォルメして描く方法で
極端な例として丸顔の人は丸を意識する。細身の人は逆三角を意識する事で
その人らしい輪郭を描く事が出来る。
まとめると似顔絵を描く時は相手の特徴(目・眉毛・髪型など)を観察して見つけ出し誇張して描くという事!
普段から創作キャラクターを描いていたり目の形の種類、デフォルメした絵などをノートにまとめたり
依頼がなくても有名人の画像を見て似顔絵を描いたりすれば練習になる。
似顔絵に限らずだが絵が上手くなるには沢山描く事なので
ぼくも絵が下手だった専門学校時から長く続けていく事で幅広い依頼に応えられるようになったと思っている。
また、無料で似顔絵を描くというのも一つの方法。
専門学校時代イベント(ぼくは参加しなかったが)で学校主宰の似顔絵イベントを開いた事があり
目的として人物画上達だと思ったが何人もこなす事で、その人の特徴が見えて似顔絵が上手くなるしタダなので描かれる人も喜んでくれるし自分の練習にもなる。
なので似顔絵に関しても続けていく事でデフォルメ方法や絵のレベルは確実に上手くなっていくと思っている。
【アクリル絵の具の似顔絵の描き方】
ここからはアクリル絵の具の使い方や描き方の話になるのだが
使用する画材は
■キャンバス
■ジェッソ
■アクリル絵の具
■メデュウム
■筆・パレット・バケツ等
一つ一つ詳しく使い方を説明すると長くなってしまうのでアクリル絵の具を使う似顔絵の流れを簡単に書いていこうと思う。
まず絵の具の定着・発色の為にキャンバスに2~3回ジェッソを塗る。
乾いたらキャンバスに完成予想図を見ながら下書きを書いていき
その下書きの上にアクリル絵の具を塗っていく。
因みに似顔絵を描く際にオススメのアクリル絵の具はリキテックスのガッシュ・アクリリックプラスという絵の具。
水を加えないと、なめらかな表現が出来ない普通のアクリル絵の具とは違い
なめらかさを特徴とするガッシュ・アクリリックプラスは人物や服装の輪郭を描く際
絵の具をそのまま筆につけて描く事が出来たり似顔絵に持ってこいの絵の具なのである。
色を塗った後は重ね塗りで陰影の強弱を作っていく
(影になる暗い部分はベースとなる色の上に濃い色を使い、光があたる明るい部分はベースとなる色の上に白を重ねて塗っていく)
その後、精密画用の細い毛並みの筆で輪郭を描いていき完成する。
今回似顔絵を描いてみて難しかったのは顔だった。
完成予想図を見て描いていても中々上手く出来なかったが何度も修正する事で完成に至った。
修正するときはジェッソではなく肌色(チタニウムホワイトとピーチを混ぜたもの)を作って塗っていった。
因みに輪郭を描く際アクリル絵の具以外(マーカーなど)を使うのはオススメ出来ない。
仮に失敗した時、修正しようとジェッソ等で塗り潰した時にマーカーの後が残って完全に修正出来ないという事があるので
アクリル絵の具で似顔絵を描く時はアクリル絵の具オンリーで描く方がベスト。
最後に絵が完成したらメデュウムを絵の上に塗って終了となる。
メデュウムをキャンバスの上に塗る事で下地を固める事が出来るのでヒビ割れ防止に役立てる事が出来るのだ。
種類も艶消しや艶あり等沢山あり目的別に使うといいでしょう。
【アクリル絵の具の似顔絵の価格とは?】
似顔絵の価格に対しても触れようと思う。
今回ぼくは3号2万円という価格で描かせてもらったが、この価格は依頼人が古くからの友達だったからで言わば友達価格。
通常オーダー品は割高でありキャンバスのサイズが上がる事に値段も変わっていき(個展・展覧会用に描いた絵はオーダー品より安い)
また普段ぼくが描くボールペン画にも言える事だがコピックを使った似顔絵とアクリル絵の具を使った似顔絵とでは制作時間や耐久性が違うので値段は変わっていく。
値段の付け方は難しいが、一番は自分が頂きたい値段をつける。
そして相場を調べる方法として
長く似顔絵を描いている絵描きさんに聞いてみたりネットで公開されている似顔絵料金を比較したり等の方法がある(もしくは自分で設定した時給換算で考える)
あとオーダー品の値段の付け方に関して安い値段で請け負う
というのは作家活動や自分の生活に響いてくるしオーダー品は地球上でただ一つしかない絵なので高めに設定してもいいでしょう。
似顔絵師さんが描く似顔絵の場合
一人、二人と人数が増えるごとに値段が上がっていくのが普通(あと背景があるかないか等)で
街角の絵師さんが描く数千円の安価なものからネットでオーダーを請け負う一万円を越える割高なものまで似顔絵料金は様々だ。
【まとめ】
今回の記事をまとめると似顔絵をアクリル絵の具で描く時は
①完成予想図を描く
②キャンバスにジェッソを塗る
③下書きの後アクリル絵の具で塗っていく
④細い毛並みの筆で輪郭を描く
⑤メデュウムでコーディング
という手順で描いていく。
似顔絵をアクリル絵の具で描くのは時間がかかるがコピックや色鉛筆とは違ったアクリルならではの色鮮やかさや楽しさ、難しさがある。
アクリル絵の具だけで似顔絵を描いている人は少ないと思うので、もし一味違った似顔絵を描いてみたいという人は今回の記事を参考に
奥深いアクリル画の世界に足を踏み入れてはどうだろうか?