チベットを旅していると必ずといっていい程チョルテンを見掛ける事がある。
チョルテンとは仏塔の事でお釈迦様が亡くなった時に彼の遺骨を八つの部族(シャカ族など)が遺骨をまつったストゥーパが起源である。
この美しき白い仏塔はチベットの寺だったり町の中、山あいの中にぽつんとあったり幾つものチョルテン群が草原の中にドッシリと鎮座していたりする。
何故こんなにもチベットの至る所に置かれているかというと一番はチベット人の信仰の高さだと思う。
彼らはマントラと呼ばれる真言を唱え、寺に行くと五体投地と呼ばれる身体全体を使った祈りを捧げる。
チベットはそんな信仰心高い仏教徒の多いチベット人の世界だからこそチョルテンが無数に置かれているのだ。
いや、もしくはこうも考えられる。
仏塔は仏陀や真理のシンボルなのでチベット各地に沢山築く事によって仏教宇宙を再現しているのかもしれない。
ぼくはチベット各地を旅している画家であるが旅の中で出会ってきた様々なチョルテンの魅力をこの記事で紹介しようと思います。
【チベット各地にあるチョルテン】
ぼくの旅の目的はゴンパ(チベット僧院)に行く事だ。
ゴンパには美しい壁画があって絵を描く為の参考になるのだけれど
特にチベットにある大きなゴンパは僧房や小さなお堂等が密集していて一つの村のようになっている。
そういったゴンパには大小様々なチョルテンがあって地元の人達が右回りにマントラを唱えたりマニ車を回しながら巡礼している。
大きさやバリエーションも色々で技術者が多いネパールに行ってみると仏教模様が装飾されたチョルテンがあったりする。
例えばスワヤンブナート周辺には仏塔やマニ車が巡礼用に設置されているが
仏塔=仏なのであれば寺そのものが曼荼羅のようだ。
文革の影響がなかったラダックでは古びたいい感じのものがあったりする。
ラダック人は仏教徒が多いためレーの町を歩くだけでチョルテンがそこかしこにあり
早朝には僧侶のありがたいお言葉と共にラダック人達が祈りを捧げる姿を見る事が出来る。
中国支配下のチベット本土に目を移すと沢山のチョルテンがありチベットに来たという事を実感できるのだが
ぼくが見てきた中で一番印象的だったのは東北チベットのアムドにあるメワ・ゴンパの巨大仏塔だ。
一体どうやって造ったんだ?
と思ってしまうほど巨大で白く輝いていた。有名な場所らしく沢山の巡礼者があふれ活気に満ちている。
この巨大仏塔があるメワ・ゴンパはメワの山あいの奥にある僧院だが寺自体も巨大だ。
このゴンパよりさらにゾルゲ方面に行くと名称不明の仏塔型の寺があり中々に見応えがある。
草原の中にある町ゾルゲのタツァ・ゴンパでは入り口近くにある二つのチョルテンがありチベット人達がよく巡礼している。
東チベット・カムのタウは民族衣装を着込んだカムパが多い小さな田舎町だが
丘にあるニンツォ・ゴンパと共に大チョルテンも美しく町のランドマークとして輝いている。
大チョルテン回りにある広場には寺と大きなマニ車連があって巡礼者や散歩しているチベット人がいたりする。
またチベットの仏塔とは違うかもしれないがネパールのボダナートには仏塔の目が四方についた巨大ストゥーパがあり本当かわからないがWikipedia情報によれば仏舎利がまつってあるらしい。
ここボダナートは以前ぼくがタンカ(仏画)を学んだ想い出の地であり周辺にはタンカスクールやチベット料理店、仏具屋があって巡礼者で賑わっているし
ゴンパも多くチョルテン探しにも適している地でもある。
スワヤンブナートにも同様の仏塔の目がついたものがあるが
アムド・ガワにあるセー・ゴンパにもネパールのような四方に目があるチョルテンを見た事がある。
なぜ目が描かれているかというと実は仏陀が座っている姿を表しているのだ。
因みにスワヤンブナートはヒマラヤ最古の寺院で文殊菩薩がカトマンズ盆地を作ったという伝説が有名だが
他にもこの仏塔には面白い話があって、仏塔内にはラビリンスがあり調査にあたった人達が二度と戻ってくる事はなかったという・・。
現在では鍵がかかって入る事が出来ないが、ぼくはその話を聞いた時シャンバラ(チベット伝説に伝わる理想郷)と何か関係があるのではないか?
と思ったくらい衝撃だった。(世界各地に伝わる理想郷伝説は地下と関わりがあるので)
話を戻すとアムドのギャロンやシャルコクにはボン教の寺が多い。
しかし仏教の影響があるため仏塔も仏教スタイルで壁画や仏像も似かよっていてチベット仏教寺院と変わりないものとなっている。*下の写真はギャロンのマルカム・ゴンパ
ぼくが行ったボン教の寺で特に印象的だったのはシャルコクのガメ・ゴンパ。
金ぴかのチョルテンがあり遠くからでも見え広い寺院内には仏像や寺が幾つもあって散策しがいがある。
チベットの仏塔は装飾されていたり白だけのシンプルなものがあったりするが
基本的に八つのスタイルに分類されており釈迦の涅槃に至るまでの八つの生涯を表している。
■Stupa of the conquest of mara(Duedul chhorten)
■Stupa of heaped lotus(Pema pungpe chhorten)
■Stupa of many doors or gates (Go mang chhorten)
■Stupa of great miracles(Tsho thul chhorten)
■Stupa of descend from the god realm(Lha bab chhorten)
■Stupa of reconciliation(Indum chhorten)
■Stupa of complete victory(Namgyal chhorten)
■Stupa of nirvana(Nyang de chhorten)
八つのチョルテンのスタイルに関して詳しく書いてある記事
https://tibetpedia.com/lifestyle/chorten-stupa/
ただ八つの形に当てはまらないものも数多くありデコレーションケーキのように小さなチョルテンを幾つも置いてある例や
やたらと装飾されたもの等、造った職人の意気込みを感じられるのもゴンパ同様見ていて面白い所だ。
【仏塔内部は宇宙世界】
チョルテンの中には内部に入れるものもあり壁画があったりマニ車、仏像が設置されていたりする。
中に無い場合であってもボダナートのように仏塔を囲むようにマニ車が設置されていて
内部や外にこういったものがあるのは仏陀のシンボルたる仏塔への祈りであり、仏塔そのものが仏の身体といって間違いないと思う。
つまり巡礼者がマニ車を回転させながら祈る行為は宇宙の中に入るという事なのだ。
それが示すようにガワのキルティ・ゴンパのチョルテン内には数多くの仏達が描かれていた。
仏達は元は曼荼羅の中に登場してきたものだが仏塔に描くという事は仏塔そのものを曼荼羅として見立てている事だと思います。
またキルティ・ゴンパのチョルテン内にはグル・リンポチェや母タントラ系の仏像が上部に鎮座している。
仏像が中にある例は他にもタクツァン・ラモのセルティ・ゴンパでも確認できるが探せばまだまだ面白い物が発見できるのではないかと。
【まとめ】
記事をまとめるとチベットの仏塔は八つの形があり巡礼出来るようにマニ車や仏像が置かれている。
また国・地域ごとチョルテンのデザイン、スタイルも様々で見応えあり。
つまり要約してカッコいいという事なのだ!
ぼくはチョルテンマニアという訳ではないがゴンパに行くと色々見て回りたくなるので
マニ・ラカンやチョルテン等をそれとなく巡礼して中に何があるか発見したくなる。
発見したものを写真におさめ絵の参考にするので、ぼくの旅は取材旅行という形をとっている。
現地で取材してきた情報はブログにて公開していくので新たにチョルテンを発見しだい更新していこうと思います。
では、そろそろ絵を描くのでこの辺で。