チベット文化圏には日本の厳かな仏教寺院とは違い、色鮮やかで美しい仏教建築物が沢山ある。
その代表的建築物がゴンパと呼ばれるチベット仏教寺院で、そこは正に仏教美術の粋を集めたような場所だ。
ボクは、そんなゴンパに描かれている壁画や仏像を求めチベット文化圏の国々を旅しているが、ゴンパにある仏教美術の数々は絵師であるボクに沢山のインスピレーションを与える事になった。
同時に仏教美術云々抜きにしても、建築物としてチベットの宗教施設の数々は好きなので、貴方に美しすぎるチベット建築世界を紹介しようと思う。
【始まりは門から】
どんな寺であれ、門は必ず存在しているが今や殆どのゴンパではチベット語と英語で寺院名が真紅の門に刻み込まれ、容易に名前を知ることが出来る。
門には美しいチベット語で刻まれた寺院名だけでなく、時として竜が巻き付いた柱があったりチベット装飾がふんだんに刻まれた門も存在する。
そう、仏教美術は門から始まっているのだ。
【いよいよ境内に、本堂前にして】
門をくぐると、いよいよ本堂だ。
が、ちょっと待って欲しい。
本堂に入る前に、広々とした境内で立ち止まりゴンパを見てみよう。
本堂は台形のような形をしていて、屋根や柱等、随所に美しいチベット装飾を見ることが出来る。
ボクの知り合いに本堂の写真を見せた所、意外な答えが返ってきた。
「随分、小さいんだね。」
確かに小さいかも知れないが、あくまで本堂は巨大なゴンパの一部であり、周辺にはアパートのような僧房が取り囲んでいる。
つまり簡単に言えば『本堂』は日本の城でいう『天守閣』のような存在だ。
ゴンパの形も様々あり、ラダックにあるゴンパの殆どはまるで城砦のような形状をしていたり、東チベット等に行くと日本の城のようなゴンパもある。
国、地域ごとに様々な形をしたゴンパが沢山あり、ボクはそんなチベット建築を見ることが好きで旅を止めることが出来ないのかも知れない。
【美しい壁画を前にして~東西南北を守護する四天王】
す、凄い・・
なんて細かいタッチで描かれた壁画なんだ。
初めてゴンパの壁画を見たときのボクの感想だ。
本堂前には美しい壁画が必ずと言っていい程描かれ(壁画がないゴンパもあるが)それらは全て四天王の壁画なのだ。
四天王は東西南北を守護する存在として日本においても知られているが、壁画として描かれているという事は、つまりゴンパの東西南北を守護しているという事が容易に伺い知れる。
当然、絵のタッチもゴンパそれぞれで絵師達の性格を知ることが出来る。
細かいの、色鮮やかなもの、荒っぽいの・・
四天王やそれを取りまく神々の壁画はゴンパそれぞれだが、美しいものが多く画家であるボクに強いインパクトを与える事になった。
因みに基本的に壁画を撮ることが出来るのは本堂の外にある四天王の壁画までで、中は写真撮影禁止な所が多い。
知らずに何度か本堂を写真撮影して注意された事がつゆ知らず・・
以下はネパールやラダックのゴンパにある壁画の数々である。
■ティクセ・ゴンパ(ラダック)
蒼を基調とした壁画が多く、城砦のような巨大な僧院はラダックのランドマーク的存在だ。
■ファルピンのゴンパ(ネパール)
カトマンズ郊外にあるダクシンカリ近くにあるチベット仏教の聖地(グル・リンポチェが瞑想した洞窟がある)にはゴンパが沢山あり、山あいの広い場所のせいか巨大なゴンパも多い。
ファルピンはネパールの観光スポットの中でも、まだまだマイナーな場所なので仏教美術が好きな人は是非一度行って欲しい。
■ボダナートのニンマ派僧院(ネパール)
今まではやたら開放的だったゴンパ。(以前は本堂内の壁画を撮っても注意される事は無かった。)
が、マナーが悪い人多く遂に撮影禁止に。
因みに四天王について詳しく書いている記事があるのでチェックしておいて欲しい。
【いざ本堂へ!】
いよいよ本堂に入って見よう!
本堂は僧侶達が読経する座椅子が幾つもあり、奥には本尊が鎮座している。
また周辺には壁画が描かれ、それらは柔和な仏達だったり、鬼のような形相の護法神だったり・・
多分最も多くチベット仏教美術を見ることが出来るのが本堂の中だ。
だが、時間帯によっては入れないことも多く中を伺い知れる事が出来ない事も多かった。
それでも運よく中に入ることが出来れば、きっと貴方を驚かす美しいチベット仏教世界が目の前に広がっているだろう。
旅をしてきた中でボクを最も驚かせたのは東チベットのカンゼ・ゴンパ
本堂はアパートのような建築をした大僧院で、中には数え切れない程のミニチュアサイズの仏像達が・・
思わず五体投地をしてしまったが、チベット文化圏の旅の中であれだけ美しい光景を見たのは初めてだったし、苦労して長旅をしたかいがあった(東チベットは移動時間が長くなる)
因みにカンゼ・ゴンパがある東チベットは有名なラルン・ガル・ゴンパの他にも様々なチベット仏教寺院がある。
ボクの旅のメインは建築物を求める旅では無いが、チベット文化圏の旅をすれば否応なしに美しいチベットの仏教建築物の数々を目にする事が出来る。
もしも貴方がチベットの建築物や壁画や仏像の数々を目にしたいなら海外に一度は旅に出て、チベットの非日常世界をその目に焼きつけて欲しいと思っている。