インド北部にはチベット仏教を信仰し、牧歌的な生活を送る人々が住む『ラダック』と呼ばれる地域がある。
ラダックは時に“チベットよりもチベットらしい”と呼ばれる位、チベット本土では破壊されてしまった古の仏教寺院や独特な文化が残っているインドの中の『小チベット』だ。
今回この記事では秘境ラダックに住むラダック人達の知られざる生活様式を紹介しようと思う。
【ラダック人達の生活】
■仕事は農業・牧畜
ラダック人の殆どは代々受け継がれている土地で農業を営んで生活している。
主に作られている作物は大麦、小麦、豆等で標高が低い地域ではリンゴやアンズといった果物も育てられている。
特にアンズは名産品の一つでラダックの中心地レーにあるアンズ専門店『ラダック・アプリコット・ストア』では干しアンズやアンズジャム等、様々なアンズ関連商品を手に入れる事が出来る。
またオーガニック食材を売っている『ゾムサ』でもアンズジャム等が売っていて、他にもランドリーサービスも行っている。
ラダックでは4月・5月頃になるとヤクやゾ(ヤクと牛の混血種)を使い畑を耕し、作物の種をまく。
収穫期の7月・8月には敷き詰めた麦の上にヤクやゾを歩かせ、その後に麦を宙にすくい上げて選別させる『オンセ』と呼ばれる伝統的な農業も行われている。
しかし現在は人手不足の為、機械に頼る農業も増えていて伝統的な生活を送る人々が住むラダックにも時代の波が訪れているのだ。
ラダックの村で大切に育てられているヤクやゾ、馬、山羊、羊といった家畜は農業において重要な役割を果たすが、その他にも肉や毛等の配給源の他、乾燥させたフンを燃料にしてストーブを焚いたりと、ラダックの生活に欠かせない大切な存在だ。
また、東部の山岳地帯に住む遊牧民達は数百頭のヤクを飼い、高品質な毛として知られるカシミア(パシュミナ)が取れるパシュミナヤギが大切に育てられている。
因みにレーではパシュミナヤギから取れたカシミア製品が沢山売っていて手編みの靴下やラダックの民族衣装のゴンチョの腰に巻く帯にも使われている。
また、ラダックはチベット程では無いが民族衣装を来ている人達が少なからず存在し、地味ながら味わいのあるゴンチュを着ている人達もいる。
民族衣装店『カイラス』ではチベットの民族衣装を多数見る事が出来るので、気になる人はチェックして欲しい。
民族衣装店カイラスはこちら
ラダックでは牧畜や農業の他にも、レーを中心に観光産業が発達している。
例えば旅行会社やゲストハウス、レストラン、タクシー運転手等、ラダックに訪れるとお世話になる人々が多い。
因みにラダックのタクシー会社は公共料金体系を作っていて、レーからどこどこまで幾らという風に料金が決まっているのでぼったくられる事は無いだろう。
【ラダックの宗教・文化】
■チベット仏教
ラダック人の殆どはチベット仏教を信仰していて、宗教中心の生活を送っている人々が多い。
例えば朝夕、仕事前にストゥーパ(仏塔)に向かい五体投地を繰り返す人々やマ二車(お経が入っている筒)を回す沢山の人々の姿を見ることが出来る。
この光景はラダックのみならずチベット文化圏何処でも見ることができ、特にネパールのチベット仏教の聖地ボダナートでは朝夕、数え切れない程の巡礼者達で溢れかえる。
だが、パキスタンに程近いラダックではカルギルやフンダルを中心にイスラム教徒が多数を占め、レーにおいても礼拝の時間になると大音量でモスクからアザーン(礼拝の呼びかけ)が流れ出す。
また、ラダックを旅するとサドゥーと呼ばれるヒンドゥー教の巡礼者と出会ったり、レーにはキリスト教の教会があったり以外にも多彩な宗教を見ることが出来る。
チベット仏教についての記事はこちら
■名前
ラダック人の名前を聞いてみるとカルマやツェリン等、チベット的な名前が多いが実はチベットと同じように家族が所属する僧院の高僧から名付けられる。
■葬儀
ラダックでは火葬が一般的で僧侶による読経が続く葬儀が行われ、遺灰はツァツァと呼ばれる器に入れられ、ストゥーパに収められたり山にまかれたりする。
因みにチベットでは鳥葬と呼ばれるハゲワシに遺体を食べさせる葬儀が行われている。
■チャム
ラダックにある僧院では年一回のペースでチャムと呼ばれる仮面舞踏祭(チベット仏教の神々の仮面を被った僧侶達の舞)が開催され、周辺には出店が集まり縁日のようになる。
チャムの日程はチベット暦で決められ、毎年ごとに開催日が変わるのだ。
こちらの記事ではチャムが開催されたマト・ゴンパについて
■ラダック・フェスティバル
9月1日から15日の間、開催される観光PRを目的としたお祭りで民族衣装を着たラダック人達のパレードやチャム、アーチェリー等が各地で開催される。
■ロサル
チベットの正月の事だが、ラダックの正月はチベットよりも2か月程早く行われ、12月から1月がロサルで各家々では宗教的行事が行われる。
このようにラダックではインドでありながらチベットの影響が強く出ていてチベット仏教絡みのイベントや文化が数多く残っている。
また、ラダック人は経験な仏教徒が多いせいかインドやネパールで出会う観光客を狙った悪い人達と出会う事なく、優しい人が多く、気持ちよく旅する事が出来る『小チベット』なので興味のある人は一度行ってみては如何だろうか?