チベット文化圏に行くと、どこからともなくチベット仏教音楽が流れだし旅人を非日常世界を誘ってくれる。
ボクはそんなチベット仏教音楽が好きでネパールに行くと必ずと行って言いほどチベット仏教音楽のCDを買ってしまうが、あの一度聴いたら頭に残ってしまうような独特な音色の仏教音楽は一体何なのか?
ボクが持っている資料や体験を用いて考察してみた。
【僧侶達による仏教音楽】
ボクとチベット仏教音楽との出会いはラダックのサキャ派寺院マト・ゴンパだった。
ボクはチャムと呼ばれる仮面舞踏を見学するためインドのチベット世界ラダックにやってきたが、マト・ゴンパのチャム開催日が1日ずれていたらしく早朝マトに向け出発するも、チャムらしき行事は行われる様子は無かった。
ただ本堂から僧侶達の読経と友にチリンチリン、プゥーッ!!
と明らかに日本の読経の様子とは違った独特な音色が本堂から放っていた。
中に入ってみると6~8人位の僧侶達が経を読んでいて傍らにはドルジェ(金剛杵)やディルブ(金剛鈴)、そしてラッパのような楽器が。
ボクが聴いた音色はディルブとジャリンと呼ばれるラッパの音で、この二つの音色と読経が見事なチベット仏教音楽を作っていたのだ。
ディルブはドルジェとペアとして使われ、仏教的意味合いとしては慈悲と智恵の融合を表している。
■チベットの法具について
またジャリンのかん高い音色は神仏を喜ばせるために僧侶達は吹き鳴らすのだ。
因みに『智恵と方便』と言えばチベットの神々で見られる男尊が妃を抱いたヤブユムという状態も同じ意味を持っている。
この二つが融合する事で悟りへと至る事が出来ると言われているため壁画等で描かれている事が多いのだ。
翌日ボクは再びマト・ゴンパに行くとラダック人で賑わい屋台が至る所に建ち並び、あたかも日本の祭りのようでもあった。
ボクは凍える寒空の中、開始時間となる11時過ぎまでブルブルと震えながら待っていると
(到着時間は8時半頃だったか・・)
ブォオオオ!!ブォオオオ!!
僧侶達が細長いトゥン(チベットホルン)を吹くと同時に寺の中から神々の仮面を被った僧侶達が舞い始めたのだ。
ボクはゾクゾクしていた。
神々が舞う様子はボクに非日常世界を創り出し、異世界に入り込んだような錯覚に入ってしまった。
あの時の事は忘れられない。
こんな非日常世界を味わうことが出来るのがチベット文化圏の旅ならではで、ラダックに行った後、チベット文化に惚れ込みタンカを習いにネパールに行ったり、東チベットの旅等チベット文化圏の国々を重点的に回るようになる。
それだけラダックで見聞きした出来事はボクの中でピン!ときてしまい、完全にハマってしまったのだ!
これがボクのチベット文化圏完全制覇の旅の始まりで全制覇するため、お金が貯まったらチベットの非日常世界を味わうために旅しているのだ。
因みにラダックで聴いたチベット仏教音楽はネパールのチベット仏教が聖地ボダナートのチベット寺院で一日中聴く事ができ、特にタプサン・ゴンパでは心打たれるチベット仏教音楽をよく聴く事が出来る。
このチベット仏教音楽はボダナートの朝夕でも聴く事が出来るし、各チベット仏教寺院で聴く事が出来る。
因みに寺院に行かずともチベット仏教音楽を聴く事が出来るゲストハウスがある。
それはタプサン・ゴンパ経営のロータスで午前中や夜に分厚い重低音が各チベット仏教寺院から流れだし、美しい音色を聴く事が出来るのだ。
ボクはそんなロータスが好きでボダナートに行くと必ず泊まるが部屋の中はベッドしかないシンプルな作りだが、広い敷地で宿泊費も安く、気持ちのいい場所なのでオススメしたいゲストハウスだ。
■ロータスについて
【仏教音楽の意味とは?】
ここで不思議に思わないだろうか?
何故、僧侶達の読経の最中に楽器を使うのか?
確かにトゥンやジャリンのように神々を喜ばせるために吹くという事もあるが、このチベット仏教音楽を語るにはチベット仏教について語らねばならない。
チベット仏教では行者が体験した出来事を瞑想や儀礼の際、自身のイメージの中へと凝縮させるのだ。
寺院で見られる壁画と言った仏教美術は視覚の中で創るイメージを司り、音を出す楽器は聴覚を司っている。
音を出す大元は空気であって、人間にとって呼吸する際に空気を発する1番身近なものだ。
この空気を神格化したものが鳥の神ガルーダでチベット仏教寺院の入り口では蛇をくわえたガルーダの彫刻を見ることが出来る。
僧侶達が楽器を使い、読経するのは音を一体化させ、全体的にイメージを体験する事にあるという。
・・・うーん。
資料をかき集め結論とした答が全体的にイメージを体験するだが、少々難しい。
ただ僧侶達がタンカを用いて瞑想や儀礼を行う際、頭の中で神々をイメージし真言を唱えながら呼び出すというのだから楽器を用いるのも同じような意味合いを持っているのだろう。
チベット仏教は奥が深い・・。