仏教の五大明王とチベットの10忿怒尊の違いとは?

ボクは仏画や仏像が好きでチベット文化圏の国々を旅しているが、とりわけ異彩を放つのが五大明王の存在だ!

だがチベット密教において五大明王は何と十尊もいて、その名を十忿怒尊といい十方位を守護する護法尊(日本でいう明王)の事を言う。

では日本の五大明王とチベットの十忿怒尊、微妙に異なる点を少しずつ解明していこうと思う。

 

【五大明王と十忿怒尊】

日本において五大明王とは中心に不動明王を、東に降三世(ごうざんぜ)明王、西に大威徳(だいいとく)明王、南に軍茶利(ぐんだり)明王、北に金剛夜叉明王を配置された形態をいいます。

この五大明王はそれぞれ五仏に対応していて、彼らが怒った姿とも言われ仏法に従わない人にやってくる恐ろしい姿の仏達です。

因みに五大明王と五仏の対比は

 

不動明王は大日如来

 

降三世明王は阿閦如来

 

軍茶利明王は宝生如来

 

大威徳明王は無量寿如来

 

金剛夜叉明王は不空成就如来

 

となっていて五大明王が中心と東西南北に置かれているのは、太陽神と考えられる大日如来と関係している。

太陽は東から昇り西に沈んでいく・・という太陽の動きが五大明王と五仏が東西南北を司っている隠れた意味だったりする。

話を戻すがチベットにおいて五大明王は、プラス五人加わり十忿怒尊として曼荼羅の十方位を守護している。

 

東はヤマーンタカ

 

南はアパラージタ

 

西はハヤグリーヴァ

 

北はアムリタグンダリ

 

北東はアチャラ

 

東南はタッキラージャ

 

南西はマハーバラ

 

上はウシュニーシャチャクラヴァルティン

 

下はトライローキヤヴィジャヤ

 

*十方位とは東西南北、東南、南西、西北、北東、上下(曼荼羅世界の上と下)の事。

 

では十忿怒尊の尊格と日本の五大明王の代表的な尊格を見ていこうと思う。

 

【不動明王】

五大明王と聞いて、日本人であるボクが真っ先に思い浮かぶのは不動明王だ。

不動明王は日本で何故か絶大な人気を放ち、日本の寺に行くと、不動明王の仏像が鎮座している、という事がよくある。

ただボクが行くチベット文化圏の国の一つネパールでは不動明王の姿を余り見た事が無い。

スワヤンブナート参道入口付近にある彫刻やパタンに不動明王らしき彫刻があるくらいで寺院に行っても不動明王の仏像があったり壁画で描かれているなんて事がなく日本ほど人気という事では無いのだろうかと思うほどだ。

不動明王はサンスクリット語でアチャラ・ナータといい右手に煩悩を打ち消す宝剣、左手に羂索を持つ青黒い忿怒の姿で描かれる事が多い。

よく明王の身体の色で使われる青黒というのは仏教において怒りを表す色で、仏法を聞かない者に対して叱りつける明王に1番あった色と言える。

 

【大威徳明王】

数ある明王達の中で最も異形とも言えるのが大威徳明王で、特にチベットにおいてヤマンタカ系の三十六臂のヴァジュラハイラヴァが異彩を放っている。

チベットでは七世紀から八世紀にかけタントリズム(密教)が盛んになって、その影響かヒンズー教の影響を受けた尊格が数々登場したのも、この時代。

チベット仏教『曼荼羅の歓喜仏ヤブユム』歴史に隠された意外な真実!!

異形と言えばチベットの護法尊が首にかけている生首や髑髏のネックレスがグロテスクで何とも密教感を漂わせているが、これは「死」を意味していて人はだれしも「時」には勝てないという事。

日本においての大威徳明王は水牛に乗る六面六臂六足の忿怒尊として描かれている姿で東寺の立体曼荼羅で国宝指定されている五大明王像の一つとして有名だ。

大威徳明王が水牛に乗っているのは仏の世界とこの世を行き来しているからなんだそう。

 

【馬頭明王(観音)】

身体が赤く馬の冠を頭上に頂く明王でハヤグリーヴァという。

日本においては馬頭観音として知られるがチベットにおいては明王として扱われ西方の守護者としてチベット仏教寺院の壁画に東西南北を守る四天王と共に描かれる事がある。

例えばボダナート入場ゲートに入り反対側にあるニンマ派寺院やベーロ・ゴンパにはハヤグリーヴァと東方の守護者ヴィジャヤが描かれている。

ヴィジャヤとはハヤグリーヴァと対をなす存在として緑色の身体で描かれ「勝利者」という意味を持っている。

 

【降三世明王】

仏教における三毒をむさぼる明王で、怒りや怠惰を打ち消すと言われる数々の武器を持った姿で描かれる。

そして彼は大自在天と妃ウマを踏みつけ忿怒の形相をしているが、大自在天事ヒンズー教の破壊神シヴァは「誰よりも勝っている」とおごったせいで大日如来が怒り降三世明王になって踏みつけたといいます。

似たような仏でチャクラサンヴァラがいるが彼もシヴァ神とその妃を踏みつけている姿で描かれチベット密教において重要な役割を担っている。

チャクラサンヴァラは通常ヤブユムの姿をとり妃ヴァジュラヴァラヒを抱いているが、これは悟りへの境地を意味している。

また深読みすればシヴァ神を踏みつけている事からヒンズー教より仏教が勝っていると見ることが出来るし、チャクラサンヴァラの怒りの青と妃ヴァジュラヴァラヒの愛憎の赤の合体がマイナス同士が悟りへ繋がると読み取れる事も出来る。

余談であるが以前、タンカ修業するためボダナートのタンカ製作所でタンカ絵師達とタンカを描いていたが、ボクが以前描いたチャクラサンヴァラを彼らに見せたが、「何だこれは?」と言われてしまった。

チャクラサンヴァラと言ったが、何のことだが判らず、彼らは作業に戻ったがネパールではチャクラサンヴァラはメジャーじゃないのかー・・

 

と思う出来事であった。

 

【大黒天】

十忿怒尊に属していないが護法神の一つ大黒天も紹介しようと思う。

大黒天、大いなる黒を意味するマハカーラはシヴァ神の化身としてチベット密教において様々な姿で描かれ、ネパールのダルバード広場にはカーラハイラブという恐ろしい仏像があり、カーラハイラブ像の前で嘘をつくと、即死亡すると伝えられている。

またカーラハイラブとは反対に慈悲深い大黒天もいて白色六臂如意宝珠マハカーラと言う。

白色は観音菩薩などに使われる慈悲の象徴としての色で如意宝珠とは何でも叶える魔法の玉の事を言う。

日本ではチベットのように忿怒尊のような描き方をせず柔和な老人として七福神の一人として日本で人気の神さまだ。

 

以上のように代表的な五大明王や十忿怒尊を紹介してきたがチベット密教には様々な護法神がいて同様に様々な神様がいる。

彼らはチベット仏教寺院に壁画の主人公として登場し、ボクは彼らと会うためチベット文化圏の旅をしている。

五大明王や護法神に興味があれば、一度チベット文化圏の国々に行って見たらどうだろうか?

最後に、この記事で使われた画像の多くはネパールで売っているポストカードから拝借したもので、なんと10ルピー(約10円)と安い!!

 

通常ネパールでアートブックを買うと何千ルピーもするから、少しでも節約したいボクはポストカードをポートブックのようにまとめている。

 

アートブックを買いたいけれど節約したいと言う人はボクのような手法をとってみたらどうだろうか?

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