衆生を救う観音菩薩の化身ターラ菩薩とめくるめく女神崇拝の世界への旅

ボクの知り合いに前世がヒマラヤの生まれという女性がいるのだが彼女は女神ターラ菩薩をし、以前様々な色からなるターラ菩薩の舞いなるものを舞った事があるという。

ターラ菩薩は日本では馴染みが無いがチベット文化圏の国々では人気の女神であり広く信仰されている。

特に人気なのが緑ターラ菩薩と白ターラ菩薩であり彼女たちは苦しみにあえぐ人を救わんとする観音菩薩が

 

「いくら修行しても衆生は救えない」

 

と涙すると左目から緑ターラ菩薩が、右目から白ターラ菩薩が生まれ彼女たちは観音菩薩に代わり苦しみにあえぐ人達を救いに奔走する存在とされる。

 

またターラ菩薩は十六歳の姿とされ遊戯坐に坐し右手を与願印(願いを叶える印)

左手に蓮華を持っているというのが基本形になる。

 

因みに蓮華を含め神仏達の持ち物には、それぞれ意味がある。

その詳細はこちら

チベット仏教の仏達が持つ法具の意味とは?『金剛杵から頭蓋骨の杯等20選』

彼女たちの出自はよく分からないが(中国という説がある)七~八世紀以降になるとタントリズム(密教)が台頭し、女神崇拝が盛んなヒンズー教の影響で仏教においても数々の女神が創られるようになった。

 

 

つまりターラ菩薩が観音菩薩の涙から生まれたというのは女神崇拝が盛んな時期に創られたという事であり観音菩薩の女性形として捉える事も出来る。

 

 

例えば蓮華手菩薩(パトマパー二)という菩薩は左手に蓮華を持ち右手を与願印をしている。これは後に登場するターラ菩薩の特徴を多く捉えていて彼女たちは観音菩薩の女性形である何よりの証拠なのだ。

 

そして観音菩薩が持っている蓮華にもターラ菩薩が生まれたきっかけがあるのかも知れない。

 

蓮華は仏教において慈悲の象徴として用いられてきたが一方で女性原理的な意味を合わせ持ちあわせタントリズムの影響でターラ菩薩が生まれたのかも知れない。

 

*因みに金剛杵は男性原理の象徴であり僧侶達の修行の中で用いられる法具でありネパールのスワヤンブナートでは巨大な金剛杵が安置されている。

 

【様々なターラ菩薩】

神仏には様々な種類の身体の色があり、これらは世界を構成する元素の色が用いられる。

その元素とは

 

黄・緑・青・赤・白・黒

 

であり一般的にこれら色が用いられる場合、観音菩薩等の慈悲深い存在は白や黄色等の明るい色、ヤマーンタカといった忿怒の存在は黒や青を用いて描かれる。

ターラ菩薩の色の意味を調べると白ターラ菩薩の身体が白いのは知恵、真実を象徴し、彼女の身体に七つの目があるのは衆生の苦しみを見渡せる能力があるとされるからだ。

緑ターラ菩薩が緑なのは大きな活力と智恵に満ちた素早い行動力を表していて、その為足を組まない遊戯坐で坐しているのだ。

色とターラ菩薩の関係は面白くチベット仏教画の本を調べていく内に発見したクルクッラー(赤ターラ)は緑ターラ菩薩のように柔和な表情をしておらず身体は赤く忿怒尊のような表情をし弓矢を持っていて踊っている姿で描かれているのだ。

ターラ菩薩は密教の台頭で登場したといったが、そんな中登場したのが金剛ターラ菩薩であり四面八臂(右手に金剛、羂索、矢、ホラ貝、左手に蓮華、弓、鉤、邪悪なるものを威嚇する人さし指)を持つ異形の姿で登場したりチベット自治区にあるペンコル・チョルテンの中にはヒンズー教の破壊の女神ドゥルガーからインスピレーションを受けたともいうべきドゥルゴーッタリニー・ターラー(ドゥルガーのように救済するターラという意味)も登場する。

 

クルクッラーや金剛ターラ菩薩といった異形の女神達が登場したのはやはりヒンズー教の影響が大きくチベット寺院内に描かれる護法神にもその影響が顕著にみられる。

東チベットのラガン・ゴンパ内にはヒンズー教の影響を受けたともいうべきヴァジュラハイラヴァやへーヴァジュラの壁画があり、その異形ぶりに驚いたという経験がある。

壁画からも判るとおりヒンズー教の破壊神シヴァ神に影響を受けたと見られる場所が随所に感じられ、タントリズムの台頭がターラといった女神だけで無く数多くの神仏に異形ともいうべき姿をとらせていったのだ。

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【ターラ菩薩とチベット仏教美術】

ボクはネパールでタンカ(チベット仏画)修行をした経験があるがボクがタンカを習ったタンカ製作所の中で最も多く描かれていたのは釈迦やチベット仏教の開祖パトマサンヴァパ・・

 

 

そしてターラ菩薩なのだ。

 

 

ネパールのタンカ屋ではターラ菩薩のタンカがよく見掛けるるが言われてみればネパールでターラ菩薩が人気なのは至極普通の事なのかも知れない。

 

 

先に言った通りターラ菩薩はヒンズー教の女神崇拝の影響を受け誕生したことを考えると仏教とヒンズー教が混在するネパールで信仰されるのは当たり前の事なのだ。

 

 

タンカ絵師達は製作所で様々なタイプの描き方をしたタンカを描いているが多くは三尊、又は大きなキャンバスに多数の神仏を描いたタンカである。

 

 

タンカにターラ菩薩が描かれる場合、中央に彼女たちの産みの親である観音菩薩が描かれ右に白ターラ、左に緑ターラ菩薩が描かれる。

 

 

ターラ菩薩が幾つも描かれたパターンのタンカがあるが、これはターラ菩薩の様々な面を表しているのかも知れない。

 

 

ボクの知り合いのタンカ絵師によると文殊菩薩には七種類の姿があるといいパトマサンヴァパがブータンにやってきた際、土着の神々を調伏するため八つの姿でそれぞれ対応するため現れ変化身を描いたタンカがブータンに存在する。

またチベット仏教寺院にはタンカ絵師達によって描かれたターラ菩薩の壁画がありネパールのマニ・ラカン(巨大なマニ車を収めた御堂)内には色取り取りの神々の壁画がマニ車の回りに描かれ様々な神々と伴った緑ターラ菩薩の壁画が存在する。

ネパールの壁画はチベット文化が失われつつあるチベット本土より美しくタンカ絵師達も多い事からチベット仏教美術に興味のある人は是非訪れてほしい場所だ。

またネパールではタンカだけでなく真鍮製の仏像でも有名であり美の都パタンではタンカ絵師と仏像を作る職人が多くギャラリーで仏像やタンカを製作する現場を見学する事が出来る。

彼らが作り続けてきたタンカや仏像の多くは海外へ輸出され、特に中国人に人気があるという・・。

 

【ターラ菩薩の祈りの言葉】

チベット文化の国々では亡くなった魂を無事に天国へ向かわせるため人々は一日に何千回も真言を口ずさみ、有名なのが観音菩薩の真言

 

『オン・マニ・ペメ・フム』

 

であり蓮華の中の宝珠よ幸あれ!を意味しているが仏教徒は信仰する尊格や仏像の前でその尊格ごとの真言を口ずさむ。

 

ターラ菩薩の場合

 

『オム・タレ・トゥッタレ・トゥレ・スヴァハ』

 

といいターラ菩薩の仏像や仏画の前でこの真言を唱えるのだ。

 

女神崇拝が盛んになったチベットで広まったターラ菩薩信仰はチベットを中心にヒマラヤの国々に広まり数々のタンカや仏像が作られチベット仏教を信仰する人々に広まっていった。

チベット文化圏の国々を歩くと彼らが信仰する神々と出会い先人達がつくってきた仏教美術や文化に悠久の想いをはせる事が出来るからボクはチベット文化圏の旅をやめられないのかも知れない。

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