2015年9月、ボクはネパールでチベット仏画『タンカ』を3か月間学びに行った。
きっかけはラダックでチベット美術の美しさを知り、彼らの文化をもっと知りたいという思いがつのりネパールへ行ったのだ。
タンカというのはチベットの仏画の事で伝統的手法によって書かれたものだけを指し、用途は僧侶が修業や瞑想のためだけに使われる。
またボクの知り合いのタンカ絵師の話によればチベット人はタンカを一家に一つあり、そこに彼らの信仰心の高さをうかがい知れる。
【ネパールでタンカを学ぶ】
タンカを学べる場所は日本でもあるが本場で学びたいという思いがあってネパールまで行ったが、そもそもボクはあてがあるわけでもなく1人で学べる場所を探さなくてはいけなかった。
ネパールでタンカを学べる場所を考えると候補となるのは二つの町だ。
其の一
『美の都』パタン
パタンは古くからネパールの絵師を育て育んだ古きよき町で、多くの寺院や僧院が残されている。
パタンの入りくんだ通りを歩くとタンカを制作している工房や学校がありタンカを学ぶためには最適な場所だ。
其の二
『チベット仏教の聖地』ボウダナート
ボウダナートは世界一大きいストゥーパ(仏塔)があることでしられ周辺にはチベット仏教寺院ゴンパが建ち並び、ネパールのチベット世界を形成している。
またボウダナートもパタン同様タンカを学べる場所が多く、シェチェン・ゴンパ運営のツェリン・アートスクールといった本格的にタンカを学べる場所もある。
ボクはこの二つの町に絞っていたが、ボクが選んだのはボウダナートだった。
理由は三つあり、ボウダはパタンと違いゲストハウスの数が多く、宿を探すのが困らないという点だ。
タンカ絵師を見つけ出し彼の家でホームステイをするというのも考えたが確率が低いから避けることにした。
二つ目は
タンカを学べる場所が多いという点だ。
ストゥーパ周辺には外国人向けのタンカスクールが多く、個人でタンカを描いている絵師の人もあるという情報を掴んでいたボクはボウダに決めたのだ。
だが1番の理由はボウダが『チベット仏教の聖地』だという事だ。
ボウダにあるゴンパの数は20を超え、ゴンパ一つ一つに特色があり美しい壁画が数多くある。ゴンパに行くことは何よりの絵の勉強になるのだ。
そんな理由がありボクはボウダでタンカ修業することになる。
因みにボウダナートのゴンパ一覧はこちら
【タンカ絵師マイラ氏との出会い】
ボクはロータスで宿をとると早速タンカを学べる場所を探るべく行動した。
先に述べたようにストゥーパ周辺にはタンカスクールが多くあることもあり、まずはタンカスクールに話を聞きに行く事にしたが結果はどこもかしこも外国人料金で授業料が高く、とても3か月間も学べる事は出来なかった。
次に向かったのはツェリン・アートスクール。
ここはシェチェンゴンパが運営している本格的な学校だが気になる事があった。
在学期間は6年間もあるのだ。
ただ一ヶ月の授業料は30$と安くもし行けるのなら、ここで学びたいと思った。
だがダメだった。6年オンリーと言われ門前払いされたボクはまた1から探さなくてはいけなかった。
だから最後の希望にかけタンカ絵師を見つけ出すために、ボウダに住んでいる人達に一人一人声をかけ教えてくれるタンカ絵師を探すことにした。
何人も声をかけるが中々タンカ絵師を知っている人に出会う事が出来ず、諦めかけたその時・・!
日本語でどうしたの?と声をかけてきたネパール人男性が。
彼の名はラマさん。
ラマさんは日本に6年間住んでいたことがあり日本語に堪能で、その彼に相談した所、タンカ絵師の方を紹介して貰えることになりボクは彼の元、残りの滞在期間を使いタンカを学ぶ事になったのだ。
これがボウダでタンカ工房を営むタンカ絵師マイラ氏との出会いだった。
【タンカ工房でタンカを学ぶ】
行ってみて分かったのだがタンカ制作というのは1階のタンカ販売店の2階にタンカ工房があり、その場所で何人もの絵師の人達によってタンカを制作されそこで完成したものを売っていくという形をとっているのだ。
つまりマイラ氏はそのタンカ屋のオーナーで普段はお客の相手をしたり2階の工房で働くタンカ絵師達の指導を行っているのだ。
ボクはその工房で他のタンカ絵師達と共に学ばせてもらうことになった。
因みに3時間だけで1日300ルピーで手をうってくれた。これは他のタンカスクールと比べると格段に安い金額でボクは本当に助かった。
タンカ屋では始めにやったのは練習として山や川を描きそれに色を塗っていくものだった。
その次にやったのが点描の練習だった。
実はこれが1番体験で練習内容としても1番長かった。
点描というのは筆で点を一つずつ打っていくものだがタンカでは点描を空だったり地面だったり背景に使われる。
この練習が一ヶ月は続いただろうか・・
その後ネパールの正月ダサインが20日かその位ありダサイン後、練習は再開ようやく点描は終え釈迦牟尼の絵を描くことになり残りの滞在期間を使いタンカを制作したのだった。
あの経験は今に活かされ、今までにない美しい絵を描く事ができチベット文化・美術の美しさを知ることが出来た貴重な日々だった。
因みに、この時学んだタンカの描き方等をまとめてみた記事はこちら