四川省のゾルゲにはタツァ・ゴンパという大きなチベット僧院がある。
タツァ・ゴンパは18世紀に建設されたゲルク派寺院だ。
ボクはゴンパ(チベット寺院)を求めチベット文化圏を旅しているが初めてタツァ・ゴンパを訪れた印象は
大草原の中にあり広い敷地の寺院だけあって気持ちよかった。
【ゾルゲの街からタツァ・ゴンパへ】
タツァ・ゴンパはゾルゲの街の東北の端にある。
ボクはゾルゲに訪れた時、歩いて行こうとしたが以外にも広いゾルゲに戸惑い流れのタクシーを拾いタツァ・ゴンパまで行った。
ゴンパまで行く車内、運転手は
「国はどこ?」
的な事を言ってきた。
勿論ボクは中国語もアムド語もわからないのだが、大抵海外に行って初めて話しかけられる内容は出身を聞く事だ。
で、ボクは
「ジャパン」
当然通じなかった。
それでメモ帳に日本と書いて見せると運転手は
「ジューペンね。」
成る程。日本はジューペンというのか。
とボクはすかさずメモ帳に書き留めた。
余談だがボクは旅をする際、必ずメモ帳を持っていく。
特に中国のような英語が殆ど通じない国では相手とのコミュニケーションを図るためメモ帳は大いに約にたつのだ。
そんなこんなでタクシーはあっという間にタツァ・ゴンパに到着。
運転手からタクシー料金は提示されなかったが10元を渡すと
O.K.的な事を言ったのでタクシーを降りゴンパに向かった。
【ゾルゲのランドマーク『タツァ・ゴンパ見学】
まずボクの目に入り込んできたのはゴンパを囲むように幾つものマニ車が設置されていた事だ。
チベット人はマニ車という中に経が入った筒上の物を大なり小なり右回りに回し功徳を積む仏教文化がある。
ゴンパには巡礼者の為のマニ車が必ず設置されているが同様に五体投地をする台も目に入った。
全身を祈りに捧げる五体投地をしている人はいなかったが、信仰心が高い人々が多いチベットならではのものだろう。
寺院内に入ってみると、入り口すぐ横にチョルテンがあり子供も大人もグルグルと右に回っていた。
チョルテンというのは仏塔の事であり仏陀のシンボルとしてチベット文化圏各地で見ることが出来る。
因みにタツァ・ゴンパは入場料があるらしいのだが、特に何も言われなかった為ボクは左手に向かいグングンと進んでいくと
医学堂なるものが。
チベット医学は薬草療法を主とする伝統的なものだが医学堂内を覗いてみると地元チベット人達が何人か薬を買っている姿が見えた。
ただこれといって面白そうなものは無かった為、医学堂近くにあるタツァ書院に。
黄色い壁が印象的な寺院だったがお堂の中は堅く閉ざされていた・・。
ボクは元来た道を戻ると巡礼者がタツァ・ゴンパのリンポチェ(座主)、高僧と思われる写真が貼ってある看板に向かい額を当て
真言のようなものをゴニョゴニョと・・
高僧の人はチベット人に敬われていると実感出来る光景であった。
ボクは左手にあるタツァ書院隣の坂道を登っていくと
幾つもの寺院がボクの目に飛び込んできた。
【タツァ・ゴンパ大経堂と密宗院】
一番近かった大経堂というタツァ・ゴンパの本堂と思われる所に入ってみると巨大な四天王、シャンバラ王、六道輪廻図の壁画が描かれていて感動のあまりボクは全て写真に収めるのであった。
大経堂内に入る事は出来なかったが後日再び訪れてみると僧侶の人がいて中を見せてくれた。
撮影禁止だが大経堂内には美しい仏像や壁画が沢山あり画家であるボクの勉強になった。
大経堂の外には白亜の獅子像があり阿吽の形をしている。
日本でいう狛犬や金剛力士像のようなものだろう。
また大経堂の壁面にある扉には美しいチベット模様に宝剣や団結の四兄弟(象・猿・兎・鳥)の壁画が描かれていた。
大経堂を後にしたボクは大経堂の後ろにある密宗院に。
密宗院には何故か何頭もの鹿がいて襲われないように避けて入ってみる。
密宗院は他のお堂同様四天王の壁画が描かれていて天井には魔除けの為の曼荼羅が。
また密宗院だけが唯一お堂内に入る事が出来ていて中には壁画こそ無かったが秘密集会の仏画がボクの目に入った。
秘密集会というのは後期密教経典の一つ『秘密集会タントラ』のイメージが作り出した仏でありヤブユムの形をとっている。
【動物ばかりいるタツァ・ゴンパ】
密宗院の東側には大黒殿があったが入り口が鍵がかかっていて入る事が出来ず密宗院の西側にあった幾つかのお堂に入ってみた。
その内の一つにチベット人の老婆がコルラしていてお堂に設置されている鐘をならしていた。
ボクも同じようにコルラし鐘を鳴らし旅の祷りを捧げた。
お堂入り口には帝釈天と梵天が描かれていた。
釈迦が仏教を広めるきっかけを作った帝釈天と梵天の姿は日本と微妙に違っていてチベットならではだ。
他にも悟りを開くための様子を描いた壁画があったりしていてボクは記録用に写真に収めていった。
タツァ・ゴンパ東側には馬頭明王殿があり数人のチベット人がコルラしていた。
回りにはヤクの群れがいたが、さっきの鹿と言い追い出さないのだろうか?
と少し疑問に思った。
寺は普通、動物ダメなんじゃないのか?
以前福島県の寺に行った時、犬を連れ経内に入っていた男性が僧侶に怒られていたがチベットはいいんだろうか?
ネパールで番犬を買っているゴンパもある位だから動物に寛容という事なんだろうか。
いずれにしてもボクはゴンパで番犬に噛まれたことがあるから警戒しないわけにはいかない。
ボクとしては鹿だろうとヤクだろうと何とかした方がいいと思うのだが・・。
一通り見学したボクはタツァ・ゴンパを後にし今度は徒歩でホテルに戻るのであった。
【ゾルゲのキルティ・ゴンパ】
ゾルゲにはタツァ・ゴンパの他にキルティ・ゴンパ(老木寺)という巨大僧院があるが観光地という印象。
中国人観光客が溢れている寺を見るとボクとしてはヤッパリ、タツァ・ゴンパのような地元密着型寺院の方が好きである。
ただ観光地化されているせいかお堂の中を見学できる場所が多くそれはそれで面白いのだが。
ゾルゲ大草原を含む周辺の大草原には大きな寺が幾つもあるので、いつか全部巡礼してみたいと思うのであった。