注目される漫画とは一体何だろう?
漫画家を目指していた仏教美術を求め世界を旅する画家のボクなりに考えてみた。
注目される漫画とは読者を引き込むストーリー・・
そして個性的な絵の描き方をしている漫画なのではないだろうか?
【個性的な漫画】
個性的というのは何も絵のタッチが独特で他とは違うという意味ばかりではない。
例えば他の作品よりベタ(黒)が多い、トーン(影や柄を表現するために使われるシールのようなもの)がふんだんに使われている、とかを指している。
勿論画力とストーリーの面白さあっての話なのだが・・
例としてあらすじを省くがボクの思う個性的な漫画とはテガミバチや終わりのセラフだと思う。
二つともベタやトーンが多く使われ他の漫画より目が止まりやすい絵の描き方をしているのでは無いかと思う。
あと例として漫画では無いが電撃文庫の『キノの旅』の挿絵で有名なイラストレーター黒星紅白の絵は白と黒が印象的に使われキノの旅の世界観にとてもあっていて目に止まりやすい。
ボクは海外へ旅をするとキノの旅を必ずもっていって旅先の宿でいつも読んでいるキノファンだがキノの旅を読んでいると旅に出たくなり、黒星紅白の絵もまた旅に出たくなる一躍を買っているのではないだろうか・・。
ボクは元々漫画家を目指していたこともあり特にテガミバチを読んでいたがり黒星紅白の絵を参考にキャラクターを塗ったりしていたせいか漫画を描くと必然的にベタの量が多くなっていった。
専門学校でボクの漫画をみた先生は「しまっている」と言っていたがベタの量を多くすると絵全体を“しまらせる”効果があるのだ。
またトーンを併用すれば絵をもっと綺麗に見せることが出来る。
ただふんだんにトーンを使えばお金がかかるから使えない・・
という人には漫画作成ソフト等を使えば多種多様なトーンを使うことができ便利だ。
最近の漫画家の中には漫画作成ソフトを使っている人が多くトーンはパソコン上で書かれているという事があるのだ。
【個性的な漫画の絵を描くデメリット】
ただ個性的な漫画を描くという事は目にとまるという事以外にある種のデメリットのようなものがあるのだ。
ボクが体験した二つの例をだして語りたいと思う。
●時間がかかる
ベタやトーンを使っていると絵は綺麗になりしまらせる効果があるが必然的に時間がかかり作業が大変になってくるのだ。
ボクは現在絵を描いているが、その絵についても言えるのだが昔から細かく描く癖みたいのがある。
細かく描く上に様々な色を考えて塗っていかなくてはならないから本当に大変なのだが完成すると充実感があり絵にしてよかったと思っているが、これを漫画に置き換えて考えると絵以上に大変になるのではないかと思う。
何故なら漫画は大体16から32ページをめどに描く事になるが1ページ1ページ細かく描いていたらいつになっても終わらない感じがするからだ。
ボクのように様々なコマに細かく描いていく人の事を俗に描き込み系なんていわれているが特に描き込みの漫画家は本当に凄いと思う。
期限内に漫画を描き部屋で缶詰状態になる・・
担当と打ち合わせしてストーリーを考えて下書きして物語や絵を描いていく。
期限内に描いていく漫画家は正に狂気に等しい・・。
●アクが強くなる。
ボクは以前新潟県が主催する新潟マンガ大賞というものに応募して奨励賞をとった経験がある。
品評会の時、審査員にアクが強すぎると言われた事がある。
ただその言葉を聞いた漫画界の巨匠水島伸二に
「どうして見せなかったんですか?賞が取れたかも知れないのに。アクが強い所が貴方の良いところだ。」
とお褒めの言葉を言われボクが思うにベタが多かったりして一際個性的な漫画は審査する人の好き、嫌いがあるのかも知れない。
【個性的な背景の描き方】
注目される絵と言えば忘れてはいけないのが背景の絵だ。
背景、表現方法共に素晴らしいと言える地獄のアリスという漫画がある。
地獄のアリスの絵をみていると分かるが多分定規というものを使わない絵の描き方をしている。
専門学校の漫画の授業で
「定規を使わないで描いてみたら?味が出る。」
その『味』とは正に地獄のアリスで描かれているような個性的で目を引く漫画の事を言うのだろう。
ではどうすれば背景を思い付く事が出来るのだろうか?
方法としては
①参考本・画像を見る
②マンガを見る
③映画を見る
④現地に取材しにいく
この中でボクがおすすめしているのは④現地に取材しにいくだ。
本屋に行くとヨーロッパの街並みの写真が載っている参考本が売っていたりして漫画家やイラストレーターに参考となる本が売っていたり、漫画や映画のワンシーンを参考にして絵を描く方法もあるもののやはり参考にしたい街並みがある地域や国に行き取材するのがベストだ。
ボクがよく海外に行くからこんな事を言っているのかも知れないが現地に行くとその場でしか分からない匂いや空気、街並みの細かな所、街に住んでいる人等を本以上に参考にして絵を描く事が出来るのだ。
つまり外に出れば本では分からない事が沢山あるという事だ。
顕著な例としてスタジオジブリがあげられる。
ジブリは映画を創るとき現地へ取材して背景や世界観等の参考にするのだ。
例えば宮崎駿監督作品『もののけ姫』
もののけ姫に出てくるシシガミ様の森のモデルは屋久島の原生林だ。
宮崎駿は屋久島まで飛び、そこで得た情報を元にもののけ姫を創ったとされる。
画像や本でも良いじゃ無いか?と思うが現地に行って取材しなければ分からないものがあるのだろうし、それが監督のそしてジブリのこだわりであり、結果的にもののけ姫は空前の大ヒットとなった。
だからこそ漫画を描にあたり現地取材してストーリーを考えたり背景や世界観を考えるのはもしかすると思わぬ発見があったり、成功へ繋げるきっかけをも作ってくれるのかも知れない。
【注目されるストーリーに必要な事】
散々絵について語ってきたが最後に必要な事はやっぱりストーリーになってしまう。
どんなに絵が良くてもストーリー、そしてコマの動き、キャラクターの感情の動きが上手く表現されていないと編集の目に止まってくれないだろう。
ボクは以前ある出版社に持ち込みをしたが、ボクの漫画をみた編集者にこれでもかという位のダメだしをされた経験がある。
「キャラクターの感情の動きが下手だ」
「アクションシーンが下手過ぎる」
「いらないキャラクターが多い」
「主人公の顔が始めと終わりでは違っている」
等など・・。
そして最後に唯一評価したポイントは
「街の表現が上手く出来ている」
ただそれだけだった。
ボクは個性的な絵にするため背景も手書きで描きコマの一つ一つを描き込んだが結局の所、編集者は感情の動きだったりストーリーだったりを見ているのだ。
そして持ち込みをすると完膚なきまでに否定するのは、否定されても挑んでくる挑戦者を待っているのかも知れない。
■散々な結果になった最後のマンガ『神の子クマラ』について
漫画家になれば強い精神力が必要になり、何よりパートナーとなる相手だ。
何も持ち込んだ漫画が嫌いだから否定しているのでは無い。
好きだからこそ。
だという事を理解したほうがいいだろう。
恐らく感情の動きやストーリーがしっかりしていれば編集者は「後は絵だけだね」といって勉強させられるはずだ。
こうなれば漫画家デビューへはもう直ぐだ。
後は気合と根性で素晴らしい物語と絵を描いて賞に出せば漫画家になれるはずだ。