それは福島県喜多方市内の滝を探している時の事だった。
「滝の沢不動尊堂」
耳慣れない不動堂が滝検索でヒットした。
写真を見ると何処かの山の中にある不動堂と不動滝の姿が神秘的なオーラを漂わせながら写っていた。
行ってみたい…!
そう思ったぼくは滝の沢不動尊堂へと向かった。
何度も探す羽目になるとも知らずに…。
まず初めに話すが滝の沢不動尊堂は徒歩10分位しかかからない場所にある。
■滝の沢不動尊堂
ぼくのように不正解のルートを歩かない為に調査記録として残しておく。
【辿り着けない不動堂】
ぼくは普段、絵を描きながら休日は滝探しにあけくれている、しがない画家ではある。
滝と言っても山深い何時間もかけて探さないといけないような滝ではなく出来るだけ短時間(長くても1時間位)で行けるような滝を探しに行っている。
滝の沢不動尊堂も、お堂なのだからそんなに時間がかからないとはずだと当初は高を括っていた。
だが、それは甘かった。
不動堂と滝があるのは喜多方市熊倉町都の山間にある集落にあり
グーグルマップで登録されている地点では結構山深い所に登録されている。
ぼくは新潟から喜多方まで車を走らせ集落がある熊倉町都まで行き、進み続けると突き当たり別れ道にでた。
右は細い小道で左は民家が建っている。
グーグルマップでは参詣口が民家の先に登録されているが(現在は削除されている)深い木々があり、本当にここで合っているのか調査はしなかった。
むしろ手前に沢がながれていて、その沢沿いにある林道の方が不動堂へ続いているような気がしたので手前の林道を進む事にした。
林道を進み、畑近くの駐車スペースに車を停めた。
林道先がどうなってるか分からなかった為、そこからは歩く事にした。
山の中に入って直ぐの所に「不動明王」と書かれた青い看板が立っていたので、滝の沢不動尊堂はここだと思った。
だが看板の先に入ってすぐ、ぼくの目の前に飛び込んできたのは藪だった。
不動堂がこの先にあるのなら道があるはずである…
何かがおかしい…
疑念は藪を遠ざけ林道へと向いてしまった。
不正解の道だとも知らずに…
ぼくは林道を進んだ。
熊が出そうな森に囲まれながら右手には滝の沢がある林道を前へ前へと進むと、広いスペースに到着。
広場目の前には亀ヶ沢国…(恐らく国有林)と書かれた看板があり左手の林道は通行止めとなっている。
そして、ぼくは左手の通行止めの先の林道を歩く事にした。
というのもグーグルマップの登録地点を考えると蟻塚山の方角であり、滝の沢不動尊堂は林道奥にあるのではないか?
と考えたからだ。
テクテクと熊の出そうな林道を進んでいく…
だが林道は上へ上へといっている感じがした。
そして沢の音も聞こえなくなり…
道が違っているのではないか?
そう思ったぼくは引き返す事にした。
先程の広場に戻ると今度は看板の先にある道を登って行った。
沢も流れており、上流に滝と不動堂があると考えたからだ。
だが、山道を進んでいった先にあったのは藪だった。
一体なんなんだこれは…
既に1時間以上歩き回り、疲れ果てたぼくは滝探しを諦め下山する事にした。
来た道を戻ると1人の男性がいたので、不動堂の事について聞いてみた。
彼は地元の人だったが、昔連れて行って貰ったが行き方は覚えていないという。
話の中で通行止めの先の事も教えて貰い写真も見せて貰ったが、その先にあるのは藪だった。
また登録されている突き当たりの民家に参詣口があり、その先にあるのではないか?
という事だった。
男性と別れを告げ、第一回滝の沢不動尊堂調査は終了する事にした。
因みにこのあと喜多方市観光協会に連絡し滝の沢不動尊堂への行き方を聞き、福島県内のSNSのフォロワーさんに調査しに行って貰ったが結局、不動堂は見つからなかったという事も付け加えておく。
【遭難しかけた滝の沢上流へ】
第一回滝の沢不動尊堂調査から1週間たった時、再び喜多方に行く事にした。
というのも帰ってから、あの不動堂の事が頭から離れられず
何としても見つけ出したい!
という冒険心、好奇心がぼくを第2回滝の沢不動尊堂探しへと向かわせていた。
霧がたちこめる朝
あの林道も霧がかかり幻想的な雰囲気を漂わせていた。
次に調査するのは滝の沢上流。
滝は上流にあるので沢を進んでいった先にあるのではないか?と考えた。
とはいえ中々沢へ下りる事ができず
亀ヶ沢国…と書かれた先にある藪の先を目指す事にした。
藪をかきわけると道が表れた!
ビンゴ!これが参道に違いない!
と思ったぼくは、藪が生い茂る道を進んでいった。
道の先には「スギ優良遺伝子保存林」という会津森林管理局の看板が設置されており、この先に何かあるのではないか?
という予感が頭をよぎった。
その内
道はなくなり滝の沢が流れ辺りは、深い森に囲まれてしまった。
それでもぼくは上流に滝があると信じ、傾斜になっている岩場から流れる滝の沢を身体全体をフルに使い沢登りをしたのだった!
上流の滝っぽくなっている箇所をよじ登ると、そこ木々がどこまでも続く森で沢も小さくなりチョロチョロと森の奥から流れているだけだった。
もう引き返そう…
このまま進めば熊と遭遇するかもしれないし遭難のリスクもある。
ぼくは登ってきた沢を引き返した…
のだったが来た時と光景が違う気がした。
来た道と違うのか?
ぼくは無我夢中で引き返した!
ただひたすら真っ直ぐ伸びてる沢から離れず、グングンと進んでいくとようやく藪がある道へと戻る事ができ
なんとか広場へと到着。
もうヘトヘトだった…
一体何をしているのだろう…
来た道を戻り駐車スペースまで来た時の事だった。
1台の軽トラが停まっていた。
軽トラ近くを見渡すと畑の奥から地元の人と思われる男性が野菜か何かを持ち、まさに今戻って来た所だった。
ぼくは、その男性に滝の沢不動尊堂について聞いてみた。
すると彼は何と道を知っていて場所を教えてくれたのだった。
話によれば道は不動明王の看板の藪の先、僅か10分位の所にあり現在は管理人がいないため参道が荒れているという事だった。
位置的な事をいうと、そもそもグーグルマップの登録地点が間違っておりマップ上で不動堂の赤い屋根を確認出来るという事を教えて頂いた。
登録地点が間違っている…!
これが迷わせる一つの原因でもあった。
ぼくは疲れていたので今回は行くのを諦め次回、調査をする事にした。
【遂に発見!滝の沢不動尊堂】
それから2週間後。
第3回滝の沢不動尊堂調査を実行した。
前日、雨で天候的に心配はしていたが何とか雨はあがり調査に喜多方市へと向かった。
前回出会った地元の方達の話によれば熊が出るというので、ぼくは爆竹砲をダイソーで買い
山の中でバンバン!とぶっ放しながら不動明王の看板の先へと歩いていった。
奥にある藪をかき分けると傾斜になっていて
邪魔をするかのような藪があったが道らしきものがあった。
そんな荒れ果てた参道を爆竹を鳴らしながら進むと、滝の流れる音と赤い屋根が見えたのだった。
到着はもうすぐだ!
はやる気持ちを抑えながら一歩一歩、歩いていく…
すると木々がいくつも立っているグーグルマップで見た滝の沢不動尊堂の光景が目の前に広がっていた!
ぼくはとりあえず鐘を鳴らし不動堂を参拝。
お堂の中を覗くと不動明王がお祀りされているであろう厨子があり、その前に蛇が巻き付かれた男根像や奉納された品々…
そして管理人がいて、お祭りが行われていた在りし日の滝の沢不動尊堂の写真があった。
幟旗が設置され、集落の御参りをする場所だったという事を伺いしれる写真であったが
それは昔の話で現在は草が生茂り、無常を感じてしまう位に寂しい場所であった。
不動堂隣には不動滝があり、その滝から筒が伸び、手水舎へと続いていた。
滝自体は恐らく人工滝で石のようなものが積み重なっていた。
その後、SNS用に投稿するための写真を撮影し滝の沢不動尊堂の調査を終了した。
【まとめ】
今思えば、何故あんなに不動堂に固執していのか?不思議でならない。
もしかしたら調査の度に不動堂の事について教えてくれた現地の方達に会えたのは
参拝に来なくなった不動明王様が御参りに来てほしいと伝えていたのかもしれない…
そんな出来事だった。
滝の沢不動尊堂は確かに荒廃しているが、集落の仏教文化を伺い知れる場所だと思うので、いつまで残っていて欲しいと思っている。