隠れたチベット美術スポット『東チベット・ラガンにある曼荼羅世界』

東チベット・カム地方にあるラガンという小さな町程、美しいチベット美術がひしめく曼荼羅世界をボクは知らない。

ラガンという町は東チベットの康定(カンディン)からバスで三時間ほどで到着する小さな田舎町だが、ラガンにあるサキャ派僧院ラガン・ゴンパにはチベットで最も聖なる釈迦像と美しい壁画があり、仏教美術の曼荼羅世界を形成している。

チベットは世界的に見ても美しい仏教美術が多くあり、ボクはそんなチベット仏教美術に惚れ込み旅をして、日本に帰るとインスピレーションを得た事をキャンバスにぶつけて絵にするのだがラガンはボクの脳を大いに刺激した。

 

【康定~ラガンへ】

康定を朝8時過ぎに出発したボクはチベット人達と一緒にバスに揺られること三時間。

 

 

チベットの山々に囲まれた田舎町ラガンに到着。

 

 

カンゼ行き?のバスを途中下車したボクは早々にゲストハウスにチェックインするとラガン・ゴンパに向け足を伸ばした。

 

ラガン・ゴンパは町の目抜き通りすぐそばにあり、近くにはタクシー乗り場があった。

 

 

康定の次に見るチベット仏教寺院。

 

 

やはりここはチベット。

 

 

美しい門構えがある寺院は巨大で、本堂、ジョカン堂、ラカン(尊格を祀る御堂)の三つがあり、チベット人巡礼者が数多くいた。

ボクはまずするチベットで最も聖なる釈迦像があるジョカン堂に入ると何人かの巡礼者がコルラ(時計回りに回る事)していて、彼らは何度も釈迦像に祈りを捧げていた。

 

【ラガンの神聖なる仏像】

ジョカン堂にすぐ入るとある釈迦像は、チベット仏教美術の粋を集めたと思うくらい美しく、何とも神々しかった。

ボクはこういう仏教美術を見るとチベット人の信仰心の大きさと伝統技術の素晴らしさを実感するし、絵師目線でいえば絵のインスピレーションの恰好のターゲットなのだ。

 

 

やはりチベット仏教美術は美しい・・。

 

釈迦像の周りは美しい壁画や仏像が沢山あり、チベットの曼荼羅世界を作っていた。

 

例えばゲルク派の開祖ツァンカパを頂く集会図やマハーカーラの壁画、千手観音や沢山の祖師像、ターラ菩薩の仏像達・・。

ボクは美しさの余り何度もコルラし、巡礼者の邪魔にならないよう時間をかけて見学した。

 

 

凄い・・

 

 

時間をかけて東チベットに来たかいはあった・・。

 

と心に思っていたが、更なる感動が本堂に待ち受けていた。

 

【御堂ごとに壁画のタッチが違う】

本堂は門をくぐると、すぐ目の前にある巨大な御堂で、中には大きな釈迦像が鎮座していた。

早速コルラするとジョカン堂とは違う雰囲気の壁画が数多く描かれていた。

 

よく見てみると、中々お目にかかれない尊格ばかりで、カッパーラ(頭蓋骨の杯)を持つサキャ派の代表的尊格へーヴァジュラやチベット仏教で最も異形なヴァジュラハイラヴァの壁画があった。

ヒンドゥー教の破壊神シヴァのイメージを元に創られた尊格チャクラサンヴァラもあったが、壁画には布が掛けられていた。

このような尊格に布を掛けられた状態のものはラダックでも見かけた事がある。

 

ラダックのスピトク・ゴンパにあるゴンカンにあるヤマーンタカ像にも布が掛けられていた。

 

実はこれ、尊格が放つ力が強すぎるため布を掛けているのだ。

 

 

確かに・・何か異様な雰囲気を放っているのは、何だか伝わってくる。

 

因みにスピトクでボクは布が掛けられている仏像に向かい何度も五体投地を繰り返した。

 

信仰心の無いボクだがチベットを旅すると、思いがけない行動をしてしまう事がある。

 

美しい仏教美術や文化と出会うのがチベット旅行の魅力であり、ボクは彼ら文化に敬意を払う意味でも祈りを捧げたのかもしれない。

 

 

ボクはラガン・ゴンパ本堂で祈りを捧げると千手観音があるラカンに行った。

 

 

ラカンには布のような物が仕切られ、何故か仏像の台座部分が外から見えなくなっていた。

だが台座に近づくと、その理由が判明した。

 

そこにはチベットで禁止されているダライ・ラマの写真が掲げられていたのだ。

 

チベットでダライ・ラマの写真を持ってると公安に逮捕されるかも知れないチベットの恐ろしい現状だ。

だが政府が禁止してもチベット人の信仰心の高さとダライ・ラマへの敬意は揺らぐことは無い。

 

だからこそダライ・ラマの写真を掲げられていたんだと思う。

 

そしてその写真の上には巨大な千手観音があり、ボクの事を見下ろしていた。

天井には曼荼羅のような天上画が幾つも描かれ、手の込んだ造りになっている。

この千手観音がある御堂にも壁画や仏像が幾つもあり、何とも美しかったが、ボクはある事に気が付いた。

 

三つある御堂、全て壁画のタッチが御堂ごとに違うのだ。

 

多分壁画を描いた絵師が、それぞれ違うのだろうが、こんなにタッチが違うのは中々他の寺院で見ることが出来ない。

 

でも、だからこそこのラガン・ゴンパの魅力であり隠れたチベット美術スポットなのだ。

 

ラカンにある壁画は本堂の荒々しい神々ではなくターラ菩薩や釈迦如来、白傘概仏母といった柔和な尊格が多いように感じられた。

壁画はどれもこれも、手が込んでいて、細かい所をよく見られるし絵師としては土手も勉強になった。

チベットには、このような美しい壁画があるチベット仏教寺院が沢山あり、東チベット・カム地方を旅した中でラガンは最も美しかった。

 

ボクはこのラガン・ゴンパが好きになりカンゼの帰りにもう一度立ち寄ったが、ある失敗をしてしまう。

 

 

例の釈迦如来像を撮ったのだが、撮影禁止だったらしく注意されてしまった!

 

 

まぁ、こんな失敗も時々ある。

 

 

ボクは人見知りで中々現地の人に声をかけて撮影していいか?

 

 

と声をかけられないが、やはり声をかけた方が無難だと思った。

チベット人は何より宗教を重んじる民族だからであり、彼らの事を理解した上で見学した方がいいからである。

 

 

そんな信仰心が色濃いチベットには様々な出会い、仏教美術、文化があり日本とはまるで違う・・

 

 

そうチベットは絶対的な非日常世界なのだ。

 

翌日ボクはラガンを離れ巨大チョルテンがあるタウに向かう事になる。

光り輝く白亜の巨大ストゥーパ『東チベット・タウで見た巨大な信仰心の形』

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