2016年4月、ボクは衝撃を受けた。
ヒマラヤの国ネパールが大震災により大きな被害を受けたのだ。
ネパールはボクが初めて長期間一人旅をした思い出の地。
そしてその旅が仏教の絵を描くきっかけとなり、仏教美術を求める旅を始める事になった国だ。
そのネパールが大変な事になっている。
連日テレビでカトマンズの被害状況が報告され、貴重な世界遺産の数々が被害を受けている。
ボクは歯がゆい思いでテレビに目をやり、時間が過ぎていった。
【震災後のネパールに訪れる】
ボクは震災後、二度にわたりネパールに訪れた。
一回目はタンカ修業の為、二枚目はタンカを教えてくれたマイラ氏に御礼を言うため。
寺院等の貴重な文化遺産はまだまだ目も当てられない状況の場所があったが、ボクがタルラム・ゴンパを訪れた時の事だ。
タンカ絵師の人が四天王の壁画の修復をしていたのだ。
その光景を見ていてタンカ絵師とはどういう存在なのか?と考えていた。
タンカ絵師とはチベット文化の一つのタンカを継承する人であると同時に寺院の修復にも役に立っているのか・・。
チベットにおいてゴンパ(寺院)とはチベット人達と深く繋がっている存在だ。
僧侶は子供が生まれたら、その子供の名づけ親になるし、ゴンパはチベット語を教えたりと文化の継承する役目をも担っている。
チベット人達にとってゴンパは大切な場所だ。
そのゴンパの修復をタンカ絵師が担っている。
タンカ絵師とは?絵を描く仕事とは?
そんな思いにはせる出来事だった。
【絵の仕事とは?】
絵の仕事とは、恐らく絵以外の仕事と同じように誰かの約にたつことができる仕事なのだ。
絵の仕事と言っても様々ある。
漫画家、アニメーター、イラストレーター、画家・・
そのいずれも結局の所、誰かの為に仕事をしているのだ。(例え自分自身の為、お金を稼ぐ行為だったとしても)
ボクは絵を描いて、個展で展示販売したりと画家活動をしている。
だが絵とは正直あってもなくてもいい存在だ。
それでもボクは絵を買ったことで何かが変わったり、何かの約に立って欲しいと願っている。
実はそう思わずにはいられない出来事があった。
個展を開くとよく絵を買ってくれる人がいる。
彼はボクの友人の叔父で、美術教師をしている。
初めて仏教の絵をテーマにした個展を開いた際、50号程の絵を買って頂いた。
そして後に彼から聞いた話により、その絵がどうなったかという事を聞かされた?
画家にとって、売った絵がどうなったかは気になるところ。
学校に飾ってあるらしい。
多くの学生の目に触れ、飾ってある。
ボクの絵を見て、少しでもハッピーになったり、仏教の絵に関心を持ったりして頂けると画家冥利に尽きると思うのだ。
もしも何らかの絵の仕事をしているのなら、誰かの為に描いている、という思いで描いてはどうだろうか?
ボクはチベット仏教美術の素晴らしさを知って貰いたいから、チベット仏教の絵を描いている。
つまりアレンジされた絵だったとしても、チベット人達の文化を伝えるためボクは絵を描いている・・。
それは大袈裟かもしれないが、そう思わずにはいられないのだ。